EP1の真実について、推理してみましょう。
蔵臼に案内された私室での言い争いの末、夏妃は蔵臼を殺してしまいます。
「直接の死因は不明」という南条の発言から、まあ例えば即死じゃなかったとして夏妃の寝室まで行ってドアを開けようとして絶命したとかでしょうか。それで夏妃の部屋のドアの血の跡の説明はつきます。
それをかばう形で紗音は自分がやったことにしてもいいと交渉を持ちかけます(死因となった蔵臼の頭部の傷を銃でふっとばして、自分がやったように見せかけました)。
さらにキャッシュカードで親たちを魔女幻想の演出に協力することを約束させます。
5日、度重なる絵羽との確執に我慢の限界を超えた夏妃は、絵羽を殺害。秀吉は睡眠薬を飲ませただけでしょう。死後の体温などの体の変化が見受けられないことを悟られないために、シャワーをあびせたままにしたと推理できます。
紗音はこれを、煉獄の七杭を銃痕のある額に埋め込み、密室だったとの嘘を共有することでかばいます(秀吉は柄の部分だけをはりつけただけでしょう)。
あとは最後までやり終えてしまった紗音が、もう残り時間が少ないということもあり、自身の憎悪から夏妃を射殺します。
夏妃が犯人だとするその動機は、EP1の中で事細かに語られています。夏妃が犯人だと決めつけてEP1を読み返せば、その心理描写は理解できるものになるでしょう。理解できなければ、後述している駒の行動式についての部分を参照ください。
蔵臼を殺害するタイミングも、「あ、ここで殺したのね」と分かる瞬間があります。インゴットの角でゴチンとやったわけです。EP4の縁寿のセリフが伏線です。
しかし、本当の真実は、本当の犯人は違います。
ヒントは、蔵臼の顔面左半分損壊です。だって夏妃は右利きですから。そして朱志香は左利きなんですよね…。トドメを刺したのは朱志香だったのです。動機は母をかばうためです。夏妃が紗音の幻想物語に協力するのは、朱志香をかばうためだったのでしょう(朱志香が夏妃に会うシーン時に、蔵臼が血だらけのまま、「よくもやってくれたな夏妃!」とか言いながら襲ってきたと仮定する話です。朱志香は母を守るため、背後から蔵臼の頭めがけてゴチン。夏妃の寝室の扉に血が、そして蔵臼が手でベタ~とやって死亡。床にも血が広がったわけですが、カーペットが赤のため目立たずに済んだのでしょう。ベタ~となった扉をそのままにしておくとそこが殺害現場だとバレてしまうので、ベタベタと手形をつけたして、イタズラにみせかけたのでしょう)。
また、このようなやりとりがあったことを暗示する伏線として、サソリのお守りが朱志香から夏妃に渡される描写があるのだと思います。
サソリのお守りの効果は「“魔”の攻撃から守る」ですが、それは同時に「“魔”に取り憑かれない」「“魔”にならない」ことも意味します。それは、ドラキュラが首に十字架のネックレスをぶらさげながら登場するという滑稽なことがありえないように、サソリのお守りを所持している人物は“魔”ではない、つまり殺人犯ではないことを示しているのではないでしょうか。
あのシーン時に、夏妃と朱志香は、突発的ではありますが蔵臼に殺意を抱きました。そして二人とも蔵臼に致命傷となる攻撃をするのですが、結果として、朱志香の攻撃の方で蔵臼は死に至ったということなのでしょう。殺人犯という“魔”の所在が、夏妃から朱志香に移ったということを、サソリのお守りの受け渡しが暗示しているのではないでしょうか。
そのシーンの直後、朱志香が戦人たちと合流したとき、開口一番発したセリフが「……真里亜はまだ肖像画前?」です。真里亜がまだ肖像画前にいたとしたら、先ほどの騒ぎを聞かれていたかもしれないと危惧した故のセリフでしょう。ソファーで寝てると言う戦人の発言を聞いて、朱志香はホッと胸をなでおろしたんじゃないでしょうか。
また、使用人の深夜のシフトが大きく変わったのも、この件に関係しています。殺害現場が屋敷の2階廊下であり、その隠蔽作業を行わなければならなかった夏妃としては、通常シフトでは見回りの時に見つかってしまいます。郷田という、見回りよりも配膳を優先するであろう人物だけを屋敷の当番にすることによって、発見される前に片づけてしまおうとしたのです。
命令したのは蔵臼となっていますが、他のEPの描写からも、シフトの命令は夏妃がしたと考えるのが自然です。EP6では、夏妃がそういうシフトを組んだという蔵臼の証言もありますので、蔵臼が命令したというこのEPの記述は幻想でしょう。
しかし紗音が、気まぐれで屋敷に訪れてしまいました。そして、2階廊下に辿りついたその時、黄金蝶が瞬いたのです。この瞬間に、紗音のゲームがスタートしたのです。
最終的に、紗音は最後に夏妃を射殺するという行動にでますが、これは前記の紗音の動機とは直接関係ありません。EP5やEP8で語られている個人的恨みからです。これは紗音の行動式の方で説明していますので、参照してみてください。
そして、それ以外の人は全て死んだふりです。つまり、第一の晩で死んでいるのは蔵臼のみです(頭部半壊は死体、頭部全壊はそういうマスクを被っているだけということです。金蔵の書斎に、黒魔術に使用する奇怪なオブジェクトの数々がある、という記述が伏線です)。そういう演技の協力を紗音は「使用人には右代宮家当主の命令として」「大人たちには黄金を一部現金化したおよそ10億のキャッシュカードで」「子供たちにはあなたの愛する人の頼みとして」要請したのです。他殺だという真実は、24時を迎えての爆死を表すものです。
しかしこれらの推理は、ヴァンダイン第11則「使用人が犯人であることを禁ずッ!!」に違反します。正直、この赤字には参りました。夏妃殺しが紗音の犯行であるとする、動機も伏線も状況もそろっているのに、犯人でないのです。さらに他殺だとする爆死の犯人も紗音でないのなら、爆発のスイッチを入れたのは紗音でないことになります。
これは、絵羽を犯人に据えることでしか解決できないと思われます。
第二の晩にて絵羽は死んでいなかった。夏妃に殺されかけたのですが、運よく一命を取り留めていたのです。この場合も、絵羽の額に乗っているのは柄の部分だけということになります。気を取り戻したのが、第6,7,8の晩の少し前でしょう。夏妃に殺されかけた絵羽としては、夏妃を許せなくなったのです。
夏妃を呼び出した魔女の手紙の正体は、絵羽からの呼び出しだったと考えられます。紗音のゲームに逆らうわけにはいかないので、事情を知らない譲治や戦人の前には姿を見せられません。夏妃だけを巧みに呼び出すような手紙の内容だったのでしょう。そして夏妃と口論になり、夏妃を殺害してしまいます。
気が動転していたのでしょう。一目散にその場から逃げだした絵羽は、気がついた時、地下道あたりにいました。そして爆発。絵羽だけが生き残ったのです。屋敷から地下道まで急げば5分で着くというのは、EP4に伏線があります。
ただし、地下道に行けたということは、黄金の部屋を経由しなければならないわけで、絵羽は碑文を解いていなければなりません。ですが私は、絵羽がEP1にて碑文を解いたとする、確信的な伏線をみつけることができませんでした。
状況が示す伏線は、幾つかあります。例えば、第1の晩の犯行現場に魔女の手紙がなかったことです。そのせいで戦人は、犯人が昨夜の手紙の主と関係があるのか、というところから疑わなくてはならなくなり、それを確信するのは二回目の手紙を読んだ5日の20時という、超終盤になってしまいました。碑文の謎に挑戦してほしい、そしてそれができなければ碑文になぞらえてみんな死ぬよ、という明確なメッセージを伝えるのに、遅きに失しています。これは、第一の晩から第二の晩までの間、紗音のゲームが中断していることを示すのではないか、と推理可能なような気がします。
紗音のゲームがまだ続いているかのように話が展開されるのは、絵羽が碑文を解いたことを公表しないからで、絵羽はまだ紗音のゲームには乗っかりつつも、黄金の有効利用法を思案していたのだと推測可能です。
ちょっと弱い推理ですが、絵羽は4日の深夜帯に碑文を解いていたと判断し、推理を進めてみます。
EP1にて、絵羽は碑文を解きました。紗音からすべてを譲渡された絵羽は、それを公表しないという行動式になることはEP3で証明済みです。
どうしたら、この黄金を独り占めできるのか、家督を引き継ぐためにどう話を進めていくのが一番いいのか、などを模索していたのでしょう。その結果出た答えが、金蔵の書斎の封印だと考えられます。金蔵がすでに死んでいることを夏妃に認めさせることができたとき、当主の座を手にしたも同然になるのですから。しかしその試みは失敗し、夕方頃夏妃の襲撃に遭い、気絶してしまいます。
紗音はこれを受け、気絶したのを利用しようと思い、自分のゲームを続行することにしたのでしょう。本来、碑文が解かれればゲームは終了するはずですが、EP2でもそうだったように、その後にアクシデントが発生してゲームを続行できる状況になった時、自分のゲームを優先する行動式になる可能性はあると思います。
そしてゲーム終盤、意識を取り戻した絵羽は、夏妃にくってかかります。その際誤射で夏妃を殺害してしまった絵羽は、気が動転してその場から逃げだしました。無我夢中で走り続けて、気がつけば地下道にいました。絵羽の運動能力が高いことは描写されていますので、それを伏線と捉えて、短時間で屋敷から地下道まで移動可能であると、推理できるのではないでしょうか。
絵羽は碑文を解いたので、地下道に行くことは可能です。
また碑文を解いた際、紗音からの説明で爆弾の存在も知らされました。
EP7のお茶会を思い出して下さい。あの時絵羽は、爆弾のスイッチのONOFFを紗音の説明の逆ではないかと疑いましたね。このEP1では、まさにこの展開になったのではないでしょうか。
紗音は絵羽に爆弾の説明をし、5日になっていたので爆弾のスイッチはONになっていたのでしょう、そのスイッチを解除しました。しかし絵羽は、その解除した状態こそがONの状態ではないかと疑い、悩んだあげく、スイッチを解除するつもりで再びONにしてしまったのではないでしょうか。
そんな状況下で、5日の24時を迎えました。絵羽だけが爆発から逃れられる場所に。他の全員は爆死しました。この解釈ですと、他殺だとする赤字の犯人も、絵羽である、と解釈できることになります。勘違いで人殺しになってしまった、という哀れなストーリーですけどね。
最後に、私がEP1で最も怖いと思うシーンとセリフが、第二の晩が終わり、みんなが真里亜にベアトリーチェは誰だとか質問攻めにしている時、夏妃が「……真里亜ちゃん。…不謹慎な話を慎むべき時もあることを知りなさい。これ以上、混乱に油を注ぐような真似が過ぎれば、伯母さんも本気で怒ります」と発言するシーンです。ひょんなことからベアトの正体を真里亜が口にするようなことがあれば、芋づる式に自分や朱志香の犯行がバレてしまうかもしれないと危惧した夏妃が、これ以上余計なことをしゃべったら…どうなるか分かってるわよね?という意味で言ったセリフだとも受け取れるシーンだからです。…そこまでするの?夏妃姉さん!
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