綾辻行人 Another の幻影を追う

 

 

 

 

 

 

 

この物語で最初に違和感を感じたのはラストシーンだったかと思います。死者ってどういう存在なのかがある程度示されるものだと思っていたのに何も示されなかった、という部分です。

 

 

 

 

 

 

 

どういうことかというと、例えば死んだら溶け出すとか。光になって消滅するとか。髪の毛が伸びだすとか。異形な表情になるとか。影になって主人公に襲いかかるとか。

 

その他なんでもいいんですけど、普通の人間ではない存在がそこにいることによって生み出される、現実ではありえない何かが表現されて初めて「あっやっぱコイツが死者だったのね!」ってなるし、あの世の扉が開くとか、自分が死者だと自覚した瞬間に元の姿にもどるとか、元の姿ってどんなだろうとか、どこから紛れ込んだのかとか、26年前に死んだミサキとの関係性はどうなのかとか、そういった死者が生み出される<現象そのもの>の秘密に対して、さわりだけでも表現されるものだと思っていたんです。

 

主人公たちが現象の途中で死者を突き止めたことによる終盤の展開って、本来ミステリーのご褒美なはずではないですか。みんなそれができなかったから、この現象ってなんなんだろうというミステリーを解明できずに一歩も進めなくなっているわけです。それを、死者を特定するという不可能と思われた偉業を成したんだから、そんな主人公たちに(ついでにその後ろにいる我々読者に)その知的好奇心を満たすご褒美を少しでも示してくれたっていいでしょう?

 

それがミステリーじゃないですか。主人公たちが犯人を突き止めることができたことをキッカケに、犯人の秘密、事件の秘密が解き明かされていく。秘密がずっと秘密のままだったのが、犯人指摘がなされて状況が劇的に進展することで暴かれ、それを俯瞰する我々読者もようやく知れる。すべてでなくとも、怪異の一端だけでも、それは普通表現されるものだと思うのです。

 

 

でも死者が死者だと判明したのは後日談でした。

 

その内容は、それ以前までに判明していた死者に対する認識(死者と過ごしてたという記憶が無くなるとか)以上の情報がなにもありませんでした。結局なんにもわかってないのと同じです。これにとても違和感があったのです。

 

 

 

 

 

 

 

また、この現象の設定のふわっとしすぎなところも違和感しかありませんでした。例えばですが、死者がもう過去に死んでいることは改変されているという部分と、現象の範囲は夜見山地区だけに限られるという部分との整合性ってとれなくないですか?じゃあ死者が海外旅行しちゃったらどうなるんですか?パスポートって通るんですか?死んでいる人のパスポートが出国審査に通るはずないじゃないですか。でも通るんでしょ?なぜならあらゆる記録が死者を生者扱いに改変されるから。ならばその改変の影響範囲って夜見山地区だけどころか全世界に及ぶじゃないですか。なんでそのスーパーパワーが、人を死に追いやるときだけ夜見山地区だけに限定されちゃうんですか?なんで夜見山地区を逃げ出したら安全なんですか?この設定、ふわっとしすぎだと思いませんか?

 

(パスポートが通らないのであれば、毎年それでふるいにかければいいだけです。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんなんだろうこれは、と思っていました。そんなモヤっとしたものに対して、私なりの結論が出たのでそれを記します。私が変だなと思ったことにまったく共感できない方は、たぶんこれから綴る話も妄想にしか思われないだろうなと思います。

 

そんな妄想話はコチラです。

 

 

 

 

 

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