深読み2

「真賀田基志雄」という人格ですが、どういう性格をもっているのかといいますと、物語の記述にもあるように、頭を掻きむしりたくなるように肉体的な衝動として、殺人を犯してしまうというものです。これは、殺人を犯すために生まれた人格なのですから、当然そういう性格になります。ただ、だれでも殺したくなるわけではないようです。あくまで百合子を殺したいわけなので、百合子に似た人を殺したくなってしまうのでしょう。

第一の事件、阪元看護婦殺害は、浅埜先生が犯人ではなく「真賀田基志雄」が犯人であると思います。「透明人間」は阪元が好きでした。しかし彼女は浅埜と不倫をしていました。これは状況的に、百合子と被ります。その瞬間「真賀田基志雄」が目覚め、殺人を犯してしまったものと思われます。

 

状況を整理しましょう。現場はカギが掛かっていました。その扉の前で、子供たちと四季は遊んだりしていました。つまり「真賀田基志雄」はカギを掛けて現場を後にしたことになります。四季ならばそれは可能ですね。中からカギを掛けて云々のセリフは、四季が「透明人間」についたウソです。

浅埜が犯人だというウソは、四季が本気になればそれが事実であるように警察に報告することができる、ということではないでしょうか。だから浅埜は、アフリカに逃げたのです。これが第一の事件の全容です。

 

さて四季が殺人を犯したことを知った親族は、彼女を守るため、アメリカに逃亡させます。ここからの物語は、まるで「栗本基志雄」と「透明人間」が肉体的にも別人であるかのような描写で綴られています。が、時系列がデタラメになっていると解釈すれば、一人の人間としての行動だと分かります。彼女は、時間と空間のいずれとも乖離している、という記述が伏線です。

 

さらに深読みさせていただくと、「真賀田基志雄」はアメリカでコンピュータの分野で研究を進め、四季もソフトの分野に取り掛かろうとしていました。これは、自身のコントロールをコンピュータ分野に求めたのではないでしょうか。四季は、自身の中に存在する「真賀田基志雄」の人格の危険性を認識していて、その操縦方法としてコンピュータプログラムという可能性に至ったのではないかということです。

プログラムを脳に移植し、「真賀田基志雄」を抑制、あるいは消滅させることができるかもしれない。または、人格をマザーコンピュータに移植することにより、「真賀田基志雄」を肉体的に分断できるかもしれない。このような想いがあったのではないでしょうか。彼女が求めるものは、どこまでいっても自分自身の支配なのです。

 

 

第二の事件を振り返ります。まだ記していないのは動機の部分だけですね。それは前記の通り、被害者の女性が百合子に、あるいは阪元に似ていたからでしょう。白のシャツにスカートと、どことなくナースをイメージする服装だった上、ところどころ破れているような様が、浅埜との逢瀬を思い起こさせるものだったのでしょう。

声をかけた「透明人間」が冷たくあしらわれました。親切心という愛を裏切られた瞬間、「真賀田基志雄」が目を覚ましたのです。

 

 

まとめますと、物語で起きた三つの殺人は、すべて四季が犯したものなのです。親族はもちろん、四季を重要な資本主ととらえている各務も、これを隠すことにしたのです。

しかし瀬在丸紅子に会ってしまいました。四季は彼女に対し、猛烈な警戒信号を受信したのでしょう。彼女の才能に恐怖し、自身の犯罪を暴かれる可能性があると危険視したのです。

 

そして、この三つの事件に共通するキーワードが「密室」と「透明」です。この「密室」はほぼ意図的です。つまり、現場が密室であることで不可能犯罪を演出し、自身が逮捕される可能性を低くしようというものです。さらに、この「密室」をクリアするためには「透明」でもなければできっこない、という状況にすることによって、四季自身も騙すことを試みたのです。

殺人という行為は、やはりなんだかんだ大それた行為であり、四季はそれをするために別の人格まで生み出したわけですから、自分が殺人を犯したと知ることが、彼女の心を傷つけることになるだろうことを、「真賀田基志雄」は理解していたのでしょう。

世間を偽り、自分自身を偽り、殺人という大事を犯しながら、四季は逮捕もされず、自分の心も痛まない方法を、「密室」と「透明」というファクターを以って成し遂げてしまったわけです。悲しき、狂気の天才ですね。

 

 

 

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コメント: 2
  • #1

    名無しさん (日曜日, 02 5月 2021 19:54)

    肉体的に年端もいかない少女が成人女性の首を絞めて殺すなぞ考えにくいですが……

  • #2

    gultonhreabjencehwev (月曜日, 03 5月 2021 14:32)

    常識ですね(*^^*)