深読み3

これは「夏」になって明らかになるのですが、森川須磨が「春」の物語の何年後かに、事故で死亡します。しかし四季は、これに犯罪の可能性を感じ、各務に調査を依頼します。

 

私はこの事件も、四季が犯した殺人だと確信しています。

「春」から森川とは付き合いのある四季ですが、当時から四季は彼女に殺意を覚えていたのです。キッカケは「栗本基志雄」の発言で、森川が叔父の新藤清二と関係があるのではないか、というものでした。

これもまた、百合子に被る状況です。結婚している新藤を誘惑する森川。さらに四季が新藤に抱いている想いは、父親への愛のようなものではなく恋愛感情であることも「夏」で明らかにされました。もう森川には、それはそれは強い殺意を感じていたことでしょう。

 

しかし、同時に「栗本基志雄」が森川を好きであるらしいことも明かされました。彼の気持ちも考慮して、四季は殺人を実行できなかったのです。

それが「春」でのラストに、「栗本基志雄」が人格死したことにより、文字通りストッパーがなくなったため、四季は森川殺害を決行したのでしょう。

 

 

これまで記述してきたとおり、真賀田四季という人物は、とても愛情深い性格だということが分かると思います。彼女の愛する者を奪おうとする人物、あるいは不倫という愛を裏切る不貞行為そのものを、彼女は絶対に許せないのです。しかしその感情を、天才的な頭脳は否定し続けるというジレンマに陥ってしまいました。この時わずか1歳時です。1歳にしてこのような悩みを抱えなければならなかった彼女の精神は、破綻と修正を繰り返し、多重人格によって守られてきたのです。この天才的な頭脳をもってしても抑えの利かない愛情とは、いったいどれほどのものなのでしょう。本当の彼女は、深すぎる愛情によって振り回される、幼い女の子だったのです。

 

 

そして、この物語の終盤で深読みできる、さらに残酷な事実が待ち受けていました。それは「真賀田基志雄」が百合子に言ったセリフです。

 

「でも、四季は、お母様、貴女にそっくりです」

 

これをどう読み解けますでしょうか。私は、四季の本当の母親は美千代ではなく百合子であると思います。同じ青い瞳。美しい容姿。この符号は、その事実を表しているものではないでしょうか。

左千朗と美千代との間には子供はできず、逆に百合子は四季と基志雄の双子を産んだのです。世間体を気にしたのでしょう、四季のほうを実子に迎えたのではないでしょうか。

 

つまり四季は、本当の母親を殺害してしまったのです(百合子も、それを覚悟していた節もあります。実の子に恨まれても仕方のないことをしてしまった。あの子に殺されるのなら、それは本望だと)。

さらに四季の存在そのものも、不倫という許しがたい関係を経て生まれた子だったのです。この事実は、四季の精神を完全に崩壊させてしまうに十分でした。自分はいったい何のために生まれてきたのか。そのような哲学的な悩みに、永遠に苛まれることになったのでしょう。

 

 

 

彼女の人生は、人類史上最高の頭脳と、深すぎる愛情との間でこれからも翻弄されつづけるのでしょう。

エピローグに、気持ち悪い記述が存在します。四季と西之園恭輔との邂逅です。

 

*エピローグ パーティーでの四季と西之園恭輔との会話

「ああ、ええ、西之園博士」四季はお辞儀をする。「こんな端っこで隠れていらっしゃったのですね」

「彼女のせいなんだ」彼は後方の壁際を指さした。

赤いドレスの少女が床に座り込んでいる。まだ幼児だ。

「お嬢様ですか?」

「たぶん」西之園は頷いた。「実は、僕が生んだんじゃない」

「そのジョークはおやめになった方が賢明です」四季は首をふって微笑んだ。「こちらでは通用しませんよ」(中略)

「また、いつか」

「失礼いたします」四季はお辞儀をした。

「今度会うときは、絶対子連れじゃないから」

 

私のこれまでの記述を見た方なら、これがいかに気持ちの悪いシーンか分かりますでしょうか。西之園恭輔は四季に、暴言を二つも吐いていますね。もちろん彼にとっては冗談のつもりでしょう。しかし四季にとっては、「不倫」や「実子でない」といったことをイメージさせるセリフは、果たして冗談に聞こえたのでしょうか?そして事実冗談ではなかったとしたら?

 

西之園恭輔とその妻は、この後、飛行機事故で死亡します。別の物語で、それが事故ではなくテロであり、四季もそれになんらかの関与があるかもしれないことが明らかになります。

私が思っていることは、もう分かりますよね。やはり、これも四季が彼ら夫妻を事故に見せかけて殺害したというのが真実であるということです。このシーンは、その動機にかかわるシーンだということです。

 

 

少々深読みしすぎました。私はこう読んだ、というだけの、ただの戯言です。

 

 

 

(13’10’19追記)西之園萌絵の両親死亡の真実について、上記の解釈は不正解だと気付かされました。「四季の殺人」という意味ではある意味正解なのですが、真賀田四季本人が手を下したわけではないようです。これについて、くわしくはいずれ記載するかもしれません。

 

 

 

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コメント: 2
  • #1

    SenNtO (土曜日, 30 11月 2019 22:21)

    面白い見解だ…気が付かなかった…

  • #2

    gultonhreabjencehwev (日曜日, 01 12月 2019 19:10)

    コメントありがとう!このシリーズは、見る角度に気づければ、世界が変わるのが面白い仕掛けですよね!