レナの暗躍

 

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レナについて記すのは、主に鬼隠し編です。

 

罪滅し編は鬼隠し編の解答編のようなファクターを含んでいることは疑いないことかと思います。目明し編が綿流し編の、皆殺し編が祟殺し編の、解答的要素を含んでいることと同列で俯瞰できるかと思います。そこで、罪滅し編の描写を元に鬼隠し編の真実に迫ってみようかと思います。

 

 

 

まず注目したのは、レナと魅音が教室でヒソヒソ話をしていた内容です。

 

「……え、…それっていつから?」

「もう次の日にはいなかったって。……綿流しの晩に失踪したらしいよ」

「……さん………けなの?」

「わかんない。私の知る限りではね」

「……で……ってこ………他にもいるんでしょ?………が」

「…彼女が祟りにあったのか、オニカクシにあったのかはわかんないけどね……」

「……ゃあ……らにせよ……もう一人いるんだよね?……だよね?」

「オヤシロさまなら……ね」

「でもでも!……今年は………てないよ…?」

「婆っちゃと村長さんが話してたんだけどさ。……今年は事前に警察と話が付けてあるらしいんだよ。

   ……何が起こっても、騒ぎにしないで穏便に片付ける、って」

「じゃあ、……レナたちが知らないだけで………どこかで誰かが………たかもしれない……ってこと…?」

「…かも、ね」

「………次は……レナ、……かな……」

「……安心しなよ。レナはちゃんと帰ってきたよ」

「……でも………は…駄目だったんでしょ……?」

「昔の話だよ。もうやめよ、この話」

 

 

失踪した彼女とは鷹野のことなのかと思いがちですが、それだと次の犠牲者にレナが自分の危機を感じているところが不自然です。1~4年目を鑑みれば、祟りと鬼隠しの被害者は関係性が深いのは明らかです。なぜ鷹野三四が祟りだと、竜宮レナが鬼隠しになるのでしょうか(逆でもいいですが)。二人の関係性は薄いはずなのに。

 

罪滅し編のように鷹野がスクラップ帳をレナに渡したとすれば話はちがってきますが、それは考えにくいです。なぜならそれを渡されたレナは、周りへの疑心暗鬼を一気に強め、放課後の部活の参加もしなくなり、登校も怪しくなり、自分一人で過ごす時間が増えていきます。このような状態が、鬼隠し編では見受けられないからです。

 

それとも、誰かがいなくなったら自分と関係なくてもレナは「次は自分だ」と思ってしまうのでしょうか。そんな事ありませんよね。それを示す描写は、この鬼隠し編にしか存在しないからです。

 

 

 

 

 

 

 

別にこのときの会話が鷹野じゃなきゃだめな理由はありませんので、では「……さん………けなの?」の行間に当てはまる人物は、鷹野ではなく間宮リナであるとすればいいのではないでしょうか。そうであれば、鬼隠し編の様々な不明瞭な部分に光を当てることができます。

 

 

 

なぜ魅音がリナのことをレナに話すのかといえば、レナが皆殺し編のように魅音に家庭の事情を相談したから。だからリナという存在を魅音は知っていたし、気にかけていた。都合がいいことに、リナの近況は葛西が把握できる立場にいたので、詩音にリナの情報を得るように依頼していたのでしょう。そして詩音から、リナが店に顔を出さなくなって失踪しているらしいことを聞かされた。それをレナに伝えたシーンだと思われるのです。

 

このように考えれば、その死をレナが自分と結びつけて「次は私か?」という発言になることも頷けます。実の親ではない叔母が死んだ祟りと、その義理の息子の悟史がいなくなった鬼隠し。おそらく悟史が叔母を殺したのであろう状況。この関係性と、レナとリナの関係性は類似しています。

 

 

これにより、

 

「………次は……レナ、……かな……」

「……でも………( 悟史くん )は…駄目だったんでしょ……?」

 

になるほうが、会話の流れとして自然です。そうつまり、鬼隠し編でも、レナは間宮リナを殺害していたと考えられるのではないでしょうか。皆殺し編では、レナは魅音に相談することによってリナ殺害を回避できたとされています。「魅音に相談」というフラグが立てば、レナの凶行ルートは回避されるように思われますが、一応下記のような記述もあります。

 

皆殺し編

レナ「でも、あれはいいタイミングだった。

お父さん、知らない女の人のマンションの頭金を払おうとしてる矢先だったの。危ないところだった」

 

皆殺し編では、魅音に相談後にレナパパと話し合いの場を設けたことで、解決への道が開けたようです。その話し合いの場で、リナのマンション頭金支払いの直前だったそうですが、危ないところだったそうなので、これもフラグと考えていいのではないでしょうか。

 

つまり、「頭金支払いに間に合う」というフラグも存在するのではないかということです。このフラグが立たなかった場合、レナはリナに金返せと(あるいはそれを手切れ金にしろと)迫ることになるかと思います。これにリナが納得できるとは到底思えませんので、やっぱり殺しちゃうんじゃないでしょうか。

 

もしくは、「リナの妊娠(PS ではパパからのプロポーズ)に間に合う」というフラグもあった可能性もあります。引っ込みがつかない段階まで進んでしまうと、リナとの縁切りが難しくなって、殺すしかないみたいになってしまうのではないでしょうか。

 

この鬼隠し編では、「魅音に相談」というフラグは立てることができたものの、「頭金支払いに間に合う」あるいは「リナの妊娠に間に合う」というフラグを立てることに失敗した物語なのではないでしょうか。パパと話し合うのが、皆殺し編に比べるとちょっと遅かったのでしょう。

 

そしてもちろん鉄平も殺し、レナは彼女らの死体を隠した。

 

こういった状況下で、圭一は何も知らず、大石と接触した。それを知ったレナは、警察がリナたちの死に気づいて捜査しているのではないかと、そして私という容疑者に感づき、圭一に接触してきたのだと思ったに違いありません。

 

それが、あの「嘘だッ」に繋がってくるのです。圭一から、なんとしても大石の捜査情報を引き出そうとした。リナが死んでいることを警察は把握しているのか、把握しているなら私にどこまで迫っているのか、圭一は敵なのか味方なのか。そのあたりをどうしても知りたいのに、圭一がはぐらかすから激昂してしまった、というシーンなのです。

 

圭一の家で、大石との電話をレナが盗み聞きしていたのも、これなら違和感なく説明することができます。間宮リナのことを話しているのかどうかを確認するためだったのです。しかしどうも圭一の口から、「リナ」の名前が出てこない。しかし誰かが死んだことについて話しているのは間違いなさそう。もし圭一の口から「リナ」もしくは「鉄平」の名前が出てこようものなら、警察は私の犯行に気づいているとみたほうがいい。それなのにどうも確信が持てない。気づいているのか気づいていないのか分からない。だからレナは圭一のストーカーを続けたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レナは殺人までは魅音に相談できなかっただろうと思います。ですが、魅音はそれに気づかなかったはずはないと思います。

 

間宮リナについてのレナからの相談があった。そして綿流しの日にリナが失踪した。この事実から、魅音は、レナがリナを暗殺したと感づいたのではないでしょうか。というか、感づかないほど魅音が鈍感だとはとても思えません。昨年の悟史を再現したような状況なのですから、叔母殺しを悟史が犯人だと思った当時と同じく、また、祟殺し編の鉄平失踪の要因が圭一であると思った思考過程と同じく、リナ失踪の要因がレナによるものだと気づかないはずがないと思うのです。

 

だからこそ、魅音はレナに、リナが失踪している事実をコソコソ話で打ち明けた。その時のレナの反応を、魅音は見たかった。それを聞いたレナが放課後にどんな動きを見せるかも。

 

「………次は……レナ、……かな……」というレナの反応で、魅音も即座に悟史の状況と結びつけたでしょう。ああ、やっぱりレナはリナを殺したなと、それで去年の悟史のように自分も消されるかもしれないと怯えているなと、すぐに理解した。もうやめよ、この話」 とか、自分で話を振っといて、そりゃないじゃないですか、ふつう。レナのリアクションという魅音にとって知りたいことはもう知れたので、早々に話を切り上げようとしたってことなのでしょうね。

 

だからその日の放課後、魅音はバイトがあるなんて嘘をついた。そうすれば部活はその日は解散となる。レナは死体の隠蔽処理を、あのゴミ山でするはずだと踏んだ。ゴミ山で隠れて待ち伏せし、レナが何をするのかを確認しようとした。

それが的中。

 

そんなことだろうと思った。と。

魅音はレナと対峙した。

 

罪滅し編では、山林伐採計画によってレナが死体を隠そうとしている場所が安全ではなくなったことが示され、密かに遺体を移動させたのですが、この鬼隠し編においても同じことが起こっていたのではないでしょうか。だから魅音は、もし自分の想像通りなら、レナは死体の隠蔽ができていると思い込み、自分の危機に気づいていない可能性があると想定した。その場合、自分しか助けてあげられないと思った。

それも案の定だった。 

 

魅音は、死体の処理は自分に任せてほしいと言ったのでしょう。そしてこのことは誰にも言わないと約束した。罪滅し編において、レナの味方は圭一でしたが、鬼隠し編においては、魅音がレナの味方になってくれたのです。

 

 

 

 

 

 

ちなみに営林署通達の山林伐採計画ですが、罪滅し編だけの特有の現象なのかといえば、そうでなくとも不思議はないと考えられます。なぜなら、その伐採計画の受注先が「小此木造園」だからです。その規模は高津戸地区や谷河内地区と広範囲に渡る大規模伐採ですので、終末作戦に備えたこの時期にわざわざ受ける意味がわかりませんよね。

 

さらに言えば、罪滅し編の小此木と校長たちとのこの計画についての書類のやりとりを見ていれば、小此木たちが文書偽造を行って無理やり自分たちが請け負ったような形にもっていこうとしている様子が、ありありと描かれています。要は小此木たちは、この仕事をやりたがっているということです。

 

となれば、この夏季伐採計画は終末作戦に関係する仕事だとするのが一番自然になるのではないでしょうか。そういう目で再度この計画を見つめ直せば、なるほど、広範囲に渡る山を自分たちのテリトリーに置くことは、トラブル時を含めていろいろ都合がよさそうですね。

現に皆殺し編の梨花は、山中に隠れてやり過ごそうと試みたけど、7月頃には死亡したという経験談を語っています。この件も、小此木たちが伐採計画を請け負っているがゆえに、山狩りを伐採作業中という体を装うことが可能で、しかも無関係な人を山に入れさせないようにコントロールする権利まであるし、さらに山から逃げ出すこともできなくすることもできるので、梨花の捜索に非常に役に立ったから7月頭に捕まえることができたことを示しているのではないでしょうか。

 

改めて見れば、終末作戦にこの夏季伐採計画は必須であるように受け取れないでしょうか。であれば、この伐採計画は全編通して行われていると考えてもいいと思うのです。この一連の流れを鬼隠しにも継承していいのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう一つ注目すべき点は、圭一の犯行後の「注射器」についてです。この注射器に見えたものは圭一の妄想であって、本当はマジックペンだったことが罪滅し編で示唆されています。

 

しかしそれでは、圭一が時計裏に貼った注射器とメモが破り捨てられていたことの説明がつきません。圭一が最後までマジックを注射器と思い込んだままだったのなら、マジックを時計裏に貼ったことになります。それでは、それが回収された理由や、メモが一部破棄されたことの理解が難しいかと思います。

 

ですので、圭一が貼った時点では注射器だったとすれば筋が通るかと思います。であれば、魅音が握ってたものが仮にマジックだったとしても、圭一が意識を取り戻した後に床に転がっていたものが注射器だったとすればいいだけとなります。圭一がそれを同じものと勘違いしたとしても矛盾はありません。

 

これはつまり、注射器の所有者はレナだったことを示しているのではないでしょうか。彼女が死んでぶっ倒れたから床にこぼれ落ちて、それを圭一が「魅音の注射器」と思ってしまったという状況だったのではないでしょうか。

 

この考えを後押しするヒントも、やはり罪滅し編にあります。レナと注射器、この二つから連想されるものは、罪滅し編の梨花がレナに注射しようと迫ったシーンです。

 

罪滅し編でレナは、梨花ちゃんから注射器を提示され、それを全力で拒否しています。梨花ちゃん曰く、怪しいからまあ当然だと、どうすれば注射させてくれるかをいろいろ考えたけど諦めた、とのことです。ですが鬼隠し編においては、渡すことに成功したのではないでしょうか。なぜなら、鬼隠し編ではレナに渡すことが可能な説得の仕方が一つあるからです。

 

それは、「圭一を実験台にすればいい」です。

 

圭一も去年の悟史と同様、そしてあなたと同様、なにかおかしな行動をとっているのがわかるでしょうと、圭一にもこれを打って治してあげたいのだと、でもあなたに渡すわと、なぜなら、あなたにも同時に治ってほしいからだと、あなたはこの薬を信用していないが、圭一が打たれたあとの経過を伺えば、その効果がわかるはずだと、まずは圭一にこれを試してみろと、もしそれで圭一に異変が起こったのなら、自分に打つのはやめればいいじゃないかと、でもあなたを救いたいためなんだと、信用してほしいと。

 

このような説明であれば、レナは受け取れるのではないでしょうか。レナにとって圭一は、警察と繋がっている最重要の危険人物です。場合によっては始末することだって辞さない構えでいるだろうことは、罪滅し編での行動からも明らかです。

 

もし仮にこれを圭一に打って死ぬようなことになったとしても、場合によっては好都合なことだってある。最悪、魅ぃちゃんに死体遺棄をまかせればいい。その提案に乗ろう。圭一に打ってみよう。もし仮に、圭一の様子が良好になるようなら、その時は自分に打つことも考えてもいいかもしれない。

 

 

このような思考展開が想像できるのではないでしょうか。そしてレナは、圭一にこれを投与する機会を伺っていた。 

 

チャンスが訪れたのは、おはぎのお見舞いを届けようと魅音が提案したときだった。すかさず一つを自分が作ると言い出し、その一つに梨花から受け取った注射剤を混ぜた。それを圭一が摂取することで、どのような変化があるのか、レナはどうしても知る必要があった。

 

だから、圭一に食べたかどうかを聞いた。全部食べたかどうかを聞いた。体の調子はどうかと聞いた。圭一の返答は、全部は食べていない、とのこと。薬入りおはぎが食べられたかどうかは不確定。レナは、仕方なく次の方法を模索することになったのです。

 

 

 

 

ちなみに圭一の考察どおり、レナのおはぎは ”E” でしょうね。そして一口食べて、そこから裁縫針のような異物を見つけ、おはぎを壁に投げつけた。これはつまり、レナが梨花からもらった注射剤を混ぜる際、誤って針の先端が折れ、おはぎに混入してしまったことを示しているのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

罪滅し編では、針なんて出てこなかった、あれは思い込みだったという答えを示してくれましたが、 これはちょっとおかしな説明です。針が入っていたら嫌だなという思考が妄想を引き起こしたそうですが、そうであれば一つ目のおはぎを食べた時点で起こっているはずです。一つ目で起こらなかったのなら、二つ目以降は一つ目よりは警戒心が下がるのが人間です。一つ目ではスルーされ、見事完食しています。ここでなんの違和感も覚えていないのに、警戒心が低くなったはずの二つ目で針が入っていたという妄想に取り憑かれたというのは不自然です。

 

タバスコが刺激になったのであれば、二つ目にタバスコが入っていたことになります。二つ目は、圭一がレナの作ったものだと推理したおはぎです。

 

そんなことってありえるんでしょうか。

レナは自らのこねたものがクリティカルヒットおはぎだと自覚していることになります。いたずら好きの魅音とちがい、レナの真剣で真面目に圭一を元気づけようとする姿勢からはありえないと思うのです。

魅音も「くっくっく、うちひとつにはクリティカルヒットでタバスコを混ぜておいてあげよう」という言い方をしているので、意地悪いやり口であることを間違いなく自覚しているのですから、それを真面目に元気づけようとしているレナの作ったものに混ぜる神経の持ち主だったら、頭がどうかしています。

 

手作りの何かを相手にプレゼントした経験がある人なら、これがどれだけありえない状況なのかが理解できるかと思います。たとえ友達であろうと、自分が作ったおはぎには圭一に届くまで触れてほしくないと思うでしょう、ふつう。魅音も魅音で、レナがよいしょよいしょと初めて作っているおはぎに、「ちょっとそれ貸して」のノリでそれにタバスコを入れるなんてありえなさすぎます。

 

じゃあ二つ目のおはぎがレナが作ったものだとする圭一の推理が間違っているのでしょうか。それも考えにくいです。婆っちゃがこねたおはぎをレナが作ったおはぎに見せかけるならともかく、その逆を偽装できたとはとても思えないからです。

一つは不器用だけど丁寧に、他はどれも流れ作業で作ったっぽい、って圭一は推理してるんだから、レナは初めて作ったおはぎを流れ作業感満載で圭一に渡したことになりますね。そんなことがありえるのでしょうか。それに、板前さんが流れ作業で握ったシャリと、そのシャリの見た目を参考に素人が初めて握ったシャリとで、区別がつかないということはないんじゃないでしょうか。

 

 

 

となれば、圭一が違和感を感じたおはぎにはタバスコが入っていなかったと考えるしかありません。圭一が針入りおはぎに驚愕したそのキッカケは、針が入っていたらやだなという潜在意識でもなければ、タバスコの刺激でもありえないのです。

 

罪滅し編の答えとされる描写と対立するこの矛盾を解決するためには、罪滅し編の表現を「そのまま受け取る」のではなく「読み解く」ことが必要になってくるのがわかるかと思います。

 

どう読み解けばいいのか、その方向性は、下記を伏線にすればいいのではないでしょうか。

 

罪滅し編

レナ「富竹さんを死に導いた何かを、私もいつの間にか服毒させられてるみたいなの。…注射なんて物騒な方法じゃない。……多分、それは弁当のおかずに混ぜられてたの。覚えてる?先日、魅ぃちゃんが卵焼きを1人1個ずつ分けてくれたよね?あの時にやられたんだと思う。……遅効性なところがうまいよね…。くそ…!!」

圭一「おいレナ。………お前、…本気で魅音がそんなことすると思ってるのか?」

レナ「………?」

圭一「第一よ…。あの日の卵焼き、……魅音は1人に1つずつなんか分けてないだろ」

レナ「違うよ。魅ぃちゃんは、毒が入ってた卵焼きを私にわざと食べさせようとしたんだよ」

圭一「……レナ。……都合よく記憶を書き換えるなよ…。タッパーの蓋の上に、こうちょんちょんと5つ並べたんじゃないか」

レナ「並べてないよ…!1人に1つずつ配った!」

圭一「………そんなこと、…今までにあったか?俺たちは互いの弁当箱を好きに突っつくバイキング形式だぜ…?これは誰の分なんて、お上品に分けっこしたことなんて、…一度もねぇじゃねぇか…」

レナ「………………」

 

レナの目が見る見る憎悪に染まっていくのがわかる。………今のレナにとっては、俺の方が妄言なのだ。

彼女にとって、自分が毒を盛られたのはもはや事実で、それはあの卵焼きによって盛られたと『決めてしまった』。

…だから、それと食い違う話をする俺を拒絶しようとするのだ。

 

 

罪滅し編のレナは、魅音を敵とみなし、毒を盛られたことが事実であると決めてしまったために、昼食のお弁当のシーンでさえ都合よく記憶を改ざんしています。つまり、強烈な思い込みによって決められてしまった真実は、それと矛盾する話を否定し、拒絶し、記憶を書き換えるのです

 

この考え方を採用すればいいのではないかと思います。圭一の鬼隠し編を思い出している描写の実態は、「鬼隠し編の話を、疑心暗鬼の強かった圭一というフィルターをとおさず、魅音たちに対する仲間意識と申し訳無さが強烈に高まった圭一というフィルターをとおして語られた物語」であります。もっといえば、「鬼隠し編を、悪魔目線でも神目線でもなく天使目線で捉えた物語」冷静に客観的に見直してみた物語ではなく、仲間を疑うなんて論外鬼畜だという熱量で解釈し直した物語」であって、決して中立目線の客観的事実が表現されているわけではありません

 

なので、強烈な思い込みによって決められてしまった事実を、それと都合の悪い話を否定し、拒絶し、記憶を書き換えたレナと同じく、圭一にも同じことを当てはめることが可能です。

 

 

圭一が針が入っていなかったという結論を導いた、その思考過程を追っていってみましょう。

 

あるはずが、………ないんだよッ!!!

おはぎから針なんか………出てくるはずがなかったんだ!!!

何も出てなんか来なかったじゃないかいッ!!

 

まず、圭一が「針なんか入っていなかった」になるまでに「あるはずがないんだよ」という言い聞かせからスタートしています。つまり自分に強烈な自己暗示を掛けている状態ですね。なぜなら、魅音がそんな奴なわけないじゃないかという想いが初めから前提としてあるからです。そして「出てくるはずがなかったんだ」と自己暗示が成功し、レナの『決めてしまった』状態と同じくらいまでもってこれたことが示された。最後に「出てこなかったじゃないか」という決めつけがなされた。この決めつけは、実は針が出てきていたとしてもそんな事実は脳が拒否し、出てこなかったが真実になるよう改ざんする力があることは描写のとおりです。

 

 

 

こういう読み解き方であれば、罪滅し編と鬼隠し編の矛盾点も解消されます。罪滅し編は "答え" を示したのではなく、"真逆の可能性" を示しただけでありますので、であれば、二つをすり合わせることで見えてくる事実、「両極ではなく真ん中」を捉えることができるかと思います。 この「おはぎから針でてきた事案」だけ見れば、針は入ってたけどわざとじゃなかった、が真ん中になると思うのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして最後、圭一に注射するチャンスが訪れました。なんか知らんけど、圭一を追っかけてったら変なやつらに襲われてて気絶しちゃっているのを発見したのです。レナは、ちょっと邪魔なその変な連中を片付け、まだなんか追手もいそうなので、自分の行為と観察を邪魔されないように、一旦圭一の家に連れて行くことにしたのです。

 

そしてそこで圭一に注射しようとした。ところが、注射器の先端が折れていることに気づく。しまった、いつ折れたのか。家にまだ新しいのがあるから取ってこようか。いやまた圭一に逃げ出されても面倒だ。ここで監視していたい。どうする?

 

 

このような思考を展開させていった。

だから、魅音と医者を呼んだ。

 

医者を呼んだ理由は、圭一の診断をしてほしかったからでしょう。薬を打たれた後の圭一の容態を正しく知ることで、自分に打つことも検討してもいいと思っているからです。

 

そして魅音にはおそらく、自分の家から注射器を取ってきてほしいと伝えたのでしょう。さすがに自分が普段使う栄養剤的なものだとかなんだとか嘘をついたとは思います。罪滅し編の人質籠城事件において、大事なときには圭一くんを頼るねという姿勢をもとに、人質監視は自分が行って、圭一には比較的フリーに動いてもらったことと同じく、大事な局面である今、魅音に注射器を取ってきてもらって、私は圭一を見張ろうと決めたのではないかと思います。

 

もちろん数パーセントは、魅音が裏切る可能性も念頭に置いていただろうとは思いますが。

 

 

 

そして、圭一が目を覚まし、レナは擬態する。まだ魅音が到着していない。注射ができない。逃げ出されないように監視を続けなければ。その後、ようやく魅音が到着。間に合った。魅音はレナに注射器を渡した。準備は整った。

 

魅音の罰ゲーム発言から、自然に圭一のバックを取ることができた。手にはすでに注射器をセットしてある。魅音がマジックで圭一のシャツに落書きをしようとした瞬間、圭一のがら空きの首筋に、注射針を挿入した

 

 

 

その直後に、圭一の反撃に遭ってしまったということなのでしょう。圭一は首筋に電流が走ったような感覚を覚えていますので、針がささったところまでは間違いないと思います。ただ、注射剤そのものを注入することができたかどうかは微妙なところです。

 

 

余談ですが、圭一を襲った二人組の退治といい、圭一を家まで運んだことといい、圭一を羽交い締めにして身動きさせなかったことといい、終盤のレナからはスーパーパワーが伺えますが、これはレナの思惑とは別の事案になりますので、ここでの説明は省きます。核心にふれたならば明らかになる、そういうファクターです。

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにですが、罪滅し編において圭一が、レナを疑ったことは間違いだったという答えらしきものを示してくれています。なぜなら、レナが圭一の襲撃に対して、最後は頭を庇うことなく両の手を圭一に差し伸べてきたからだと。普通頭を守るだろと。そうせずに、俺を最後まで信じて両手を差し伸べたんだと。だからレナはシロだと。それを信じられずに殴り続けてしまった俺が間違いだったんだと。

 

この結論もやはり、鬼隠し編のレナの黒い思考を否定するものではありません。そのヒントも罪滅し編にありますので、やっぱりこれも「そのまま受け取る」のではなく「読み解く」という方向性で見ていきます。

 

罪滅し編における、レナが間宮リナを殺害するシーンを思い出してください。話し合いは決裂し、緊張感漂う空気の中、リナは何を思ったか自然に両手をレナに差し伸べてきました。レナはその意図を汲めず、しばしフリーズするしかなかった。結果、リナの両手はレナの首にかかり、危うく絞殺を許すところでしたね。

 

 

こんなあからさまな伏線があるのですから、つまり、レナは圭一にも同じ作戦を決行したんだと推測可能です。圭一の追撃を逃れて反撃するため、フリーズしてしまったあのリナの作戦の有効性に賭け、圭一のフリーズをねらって両手を差し伸べたのです。つまり、シロどころか、真っ黒です。

 

 

 

 

 

 

鬼隠し編における圭一の判断は、概ね間違っていなかった。圭一の危機感は、間違っていなかった。その牙が喉元までかかっていたことは、間違いなかったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーひぐらし大学ミステリー研究会調査ファイル(了)

 

 

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コメント: 4
  • #1

    奉プレイ中 (木曜日, 21 11月 2019)

    他の考察にあった
    カケラ=梨花ちゃんの妄想で描いたifの世界
    っていうのが正しいなら
    罪滅ぼしの「別の世界の自分を思い出す」というのは、圭一のデジャヴと想像力によって生み出された空想の世界ってことになるのでは?
    しかも梨花ちゃんは、圭一の妄想に対して深掘りしてしかもその妄想世界を肯定することで、自分の妄想を他者に肯定させたってことに…
    つまりマインドコントロールを行ったってことになるんじゃなかろうか。

    そういう目で見ると罪滅ぼしの鬼隠し編回想は記憶改竄どころか捏造ってことになるんですかね

  • #2

    gultonhreabjencehwev (金曜日, 22 11月 2019 01:47)

    コメントありがとうございます!

    たぶんですが、次以降の項目を見ていない限りでのコメントになるのかなあと思いました。一応次の項目に、鬼隠し編を思い出した圭一の詳細を記しましたので、そちらを参考にしていただいたあとにあらためてご感想いただけたら嬉しいです!

    梨花が圭一をマインドコントロールしたという視点は面白いです!私の捉え方では、梨花は圭一から情報を得る行為をしているという認識でいますね。それにより、どういう環境だと圭一は暴力的になるのかとか、そういった圭一の心の動き、思考の行き着く先を読みやすくなる。どうアプローチすれば圭一が手駒として優秀な働きをしてくれるかという計算を立てやすくなる。より正確に未来を予測できる。

    そういう感覚ですね~。

  • #3

    名無し (土曜日, 30 11月 2019 00:38)

    実際本編に「仮に、本当に針が入っていたとしたって、何かの間違いで混じったんだと彼女らの無実を信じるのが本当の仲間ってもんだろう」って言ってますしね。 わざわざ言ってるあたり、メタ的な意味も含めてこの可能性を示唆してますよね。

  • #4

    gultonhreabjencehwev (土曜日, 30 11月 2019 20:44)

    コメントありがとうございます。そこを拾えましたか~いいですね~こういうの大好きです!メタ的な推理ってひぐらしいっぱいありますよね。

    例えばなんですけど、お疲れ様会、あれの存在意義的なことを考察するとき、メタるんですよね~。ひぐらしが本当にファンタジーなんだったら、お疲れ様会の存在なんて作者の自虐でしかないじゃないですか。黒歴史そのものじゃないですか。だったらCS版では削除すればよかったのにねって思いませんか?魅音の人間犯人説がどうのというセリフをわざわざ言わせたあたり、それがわざわざ残ったままなあたり、メタ的に考えると、ひぐらしはファンタジーではないって可能性を示唆してると、私は思うんですよね~。

    こんなカンジのメタなら、私も数え切れないくらいいっぱい持ってます!