二重人格の扱われ方

 

 

> TOP 

 

 

 

ひぐらしにおける凶行は、二重人格と密接な関係にあります。

 

 

鬼隠し編 ー 圭一

「俺が……やったのか……?」

…そうだよ。前原圭一。俺がやったんじゃないか。

なぁ俺。…無理に思い出さなくていいし、後悔する必要もない。

……やらなきゃやられてた。それはわかってるだろ……?

(凶行を思い出そうとする圭一)

…………ぷつん。と、…ここで真っ暗になる。

俺というビデオが、ここから先を録画していないとでも言いたげだった…。

いや…違う。………録画してないんじゃない。

ちゃんと録画されている。

ただ………俺の中のもう一人が……見るなといってテレビを消しただけなのだ。

 

綿流し、目明し編 ー 詩音

詩音「……私の中に鬼が宿ったのはずいぶん前。…その鬼は私を蝕み凶行に駆り立てようとした。…だけれど、私はそれを理性で抑えつけた。…鬼はそれで治まり、…私は、その鬼はどこかへ行ってしまったんだと思い込んでいた。…でも、本当は違った。……私の中から出て行ったんじゃなく、…私の中で眠っていただけだったの」

 

罪滅し編 ー レナ

ただひとつわかるのは、…茨城の私と、ここにいる私は別人だということ。

竜宮レナは竜宮レナで、…茨城にいた竜宮礼奈が…悪いことをしたって、……それは許してくれるんだよ?!

許さないよ許すわけないよ、当たり前じゃないか、前原圭一が自分をお淑やかな女の子だと信じてくれるのは、礼奈を知らないからだよ。

知っても大丈夫だよ、私のことを怖がるわけないよ…!レナはレナなんだよ、礼奈なんて引っ越す前の町の話じゃない!!

  

カケラ 北条沙都子 ー 沙都子

最近、耳を澄ませば、誰かがずっと謝っているような声が聞こえます。きっとその子も私と同じで、お母さんに生まなければよかったと言われてるに違いありません。でも、私はその子みたいに謝りません。絶対に生き延びます。逆に返り討ちにしてやっつけるつもりです。殺される前に殺し返してやります。

 

カケラ 四年目の足音 ー 悟史

……昨日、沙都子が僕に泣きながらしがみ付いてきた時。……僕は可哀想に思いながらその頭を撫でていて、……同時にもうひとつの感情に襲われていた。その頭を、鷲掴みにして、……引き剥がして壁に叩き付けたいという、信じられない悪魔の感情。駄目だ駄目だ駄目だ…、そんなことを考えちゃいけないッ…!!いや違う、考えちゃいけないんじゃなくて、気付いちゃいけなかったんだ…!

その日を境に、…僕の中にはもうひとりの僕ができた。そして、胸の内側から僕を食い破って、僕と入れ替わろうとするのだ。

 

 

 

 

上記すべての凶行に対し、被疑者は自分でないもう一人の自分の存在を認識しています。そして例外なく、そのもう一人は凶悪な思考をとっていて、本来の自分はその人物のことを必死に抑え込んでいるのが、凶行前の彼らに共通する特徴となっています。

 

 

 

 

 

 

彼らに凶悪な裏の人格があるのは、素養だと思います。彼らはもともとそういった側面を持っているということです。

 

圭一は、女性をモデルガンで打っちゃったあれ。病んでますね。その裏の人格を封印して、雛見沢に引っ越してきた。

 

レナは、茨城での暴力事件のあれ。母親の裏切りに端を発した、思い出したくもない嫌な思い出とともに、凶悪な人格もろとも「礼奈」を封印した。

 

沙都子は、ごめんなさいって言ってるあの子のように自分はならない、やられる前に殺ってやるっていう、両親を殺す直前のあれ。両親殺害時の部分的な記憶とともに抹消した。

 

悟史は、ときたま沙都子を邪魔くさいお前さえいなければと思ってしまうあれ。普段はその裏の顔を必死で押さえ込み、沙都子に優しくする表の人格とどんどん乖離を起こしていった。

 

 

 

 

 

その、もともとある裏の人格を引き出すのが雛見沢症候群という現象。眠らせていたはずの凶悪な人格が表に出てしまったから起こった、という事件が、あらゆる凶行に共通しています。雛見沢症候群が裏の人格を作るのではありません。素養的に内在させている裏の人格が、雛見沢症候群によって表出しやすくなるということです。

 

そして、表に出てしまったときが凶行の合図。圭一はバットを何度も叩き込みました。レナは魅音の頭を何度もナタで殴りました。沙都子は両親を殺しました。悟史だってバットで…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ここで魅音をピックアップします。彼女は、ひぐらしの中で、凶行に誘われることがなかった特異なキャラクターです。それはなぜなのでしょうか。

 

 

罪滅し編

レナ「……でも、あの2人を殺した日から、…もう世界はおかしくなっていたと思う。………だということは、……。……あの2人を殺すのは、……正しいことじゃなかったのかな……」

圭一「正しいかどうかは知らんが、最善手じゃなかったことは確かだな」レナ「……最善手って……?」

圭一「そんなこともわからないのかよ!!何かヤバかったり、疑いそうになったり、辛いことがあったりしたときはな。…仲間に、……相談するんだよッ!!!!」

レナ「そうだよね…。……………そうだよね……、…ぅ、……ぅわぁぁぁぁぁぁ…ん……。私が間違ってた…!!どうして…話さなかったんだろう!!何で私はみんなを信じてるのに、信じてなかったんだろう!!!」

 

 

ひぐらしのテーマにもなっていますね。凶行に走りそうになったら、相談すればいい。まさにこれが、魅音が狂気に走らない理由です。

 

 

 

目明し編

魅音「……でね。…叔父さんが今日は盛り上げてくれてありがとうって言って、売り物のお人形をみんなに一個ずつ配ったの。私以外の全員に」

詩音「うん。お姉以外の全員にね」

魅音「その、…そりゃ私も欲しかったけどさ。…みんなの手前、私にもちょうだいとは言い出せなかったし…」

詩音「相変わらずお姉は、自分の欲しい物を欲しいと言えない人ですね。…それで?」

魅音「……圭ちゃんの袋にはね、一番かわいいお人形が入ってて」

詩音「そのお人形が一番欲しかったってわけ?」

魅音「…別に何のお人形だってよかったんだよ!…圭ちゃんは…私だけもらってないって知ってたのに、…私にくれなかった。……っく…、…私に、…くれなかった。……魅音には似合わないよなって言って…くれなかった…ッ…。…次に生まれて…くる時は…ひっく、男に生まれて来い…って…そぅ…言われたんだよ…。…言われたんだよ……うっく…」

 

 

 

魅音は、いいこと悪いこと、辛いこと悲しいこと、なんでも詩音に相談していることが分かります。詩音だけでなく、綿流し編ではレナにも相談をしていました。だから魅音は凶行に誘われないのです。「仲間に相談」がバッドエンド回避のフラグだというのが、ひぐらしのテーマのひとつ。それを普段から地で行っていたのが魅音。だから豹変しない。わかりやすい方程式ですね。

 

 

 

 

 

ただし、魅音が詩音に相談することは「仲間に相談」しているわけではないことに気づきますでしょうか。魅音にとって詩音は、「仲間」ではなく「分身」だからです。

 

 

綿流し編

圭一「……魅音と詩音は、…仲はよかったんだろ…?」

詩音「さぁ、…………どうかな。…圭ちゃんは、自分の右手と左手は仲が良いと思う?」

圭一「え?右手と左手?…それは仲がいいとか悪いとか、そういう言い方でたとえるものじゃないなぁ…」

詩音「そういう関係だから。仲が良いとか悪いとか、そういう尺度では測れない関係」

 

 

体を共有しているような感覚。それが魅音と詩音の関係。詩音が悟史を好きになれば、魅音も好きになってしまう。魅音が圭一を好きになれば、詩音も好きになってしまう。肉体は別でそれぞれ個性を持っていたとしても、根本ではつながっている。そんな関係性。

 

これは、二重人格、表と裏の人格の関係性と酷似しています。魅音の裏の人格が詩音なのです。

 

魅音が詩音に相談すること。これは、圭一でいえば、あの過去の銃撃陰キャクソ野郎の自分という裏の人格に辛い感情や記憶を渡すことと同じです。質量保存の法則に則り、表はマイナスを0に戻し、裏はマイナスをさらに強くする。魅音が詩音に相談すればするほど、詩音は悪感情が溜まっていく。これが綿流し、目明し編で、凶行に走る詩音の間接的な要因です。あの人形を圭一が魅音に渡さなかったところから歯車が狂い、詩音が凶行に走る、それは、魅音が詩音に大きいマイナスを渡すから、詩音の狂気が増すということを説明しているのです。

 

 

綿流し編

詩音「……その鬼は、…ある小さなことをきっかけにまた目覚めてしまった。………それは…何に原因があったと思う…?鬼の私が教えるのも変だけれど。……あんたが全てを狂わせてしまった元凶。……………………あの時、…あんたがもらった人形を、躊躇なく私に渡していたなら、…………全ては狂いださなかったかもしれない」

圭一「……………………そんな………俺が………………、」

詩音「……………あんたが『魅音』を泣かさなかったら、……私は起きなくて済んだのにね」

 

 

つまり、魅音が詩音に相談することは、真に仲間に相談しているわけではなく、周りに相談せずにフラストレーションを裏の人格に渡してなんとか日々を乗り切っているレナや悟史などと同じことをしているのです。詩音が凶行に走ることは、魅音の裏の人格が表出したことと同じです。詩音が発狂することは、魅音が発狂することと同じ意味なのです。

目明し編における『魅音が牢に閉じ込められて悲痛の叫び声を上げ、それでも届かない止まらない詩音の凶行』というこのシーンは、一人の人間の裏の凶悪な人格が本体を乗っ取り、表の人格を閉じ込めていることとまったく同じことを表しているのです。

 

となれば実質的な意味でひぐらし中、凶行に誘われることがなかったキャラは梨花ちゃんただ一人ということになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、ここでいう魅音の裏の人格っていうのは、村の会合などで出てくるあの冷徹な立ち振舞いをするあの顔のことではありません。あれは単純に、そういう立場を演じているときの顔、衣装、仮面、と同じです。それではなく、もっと心の奥底に閉じ込めているような、表にできない自分の本当の想いの塊みたいなものが人格を形成したもののことです。

 

 

 

 

これと同じようなヒト型を形成しているのが梨花ちゃんです。

 

梨花ちゃんの表の人格は、通称『黒梨花』と呼ばれるあれです。あれが梨花ちゃんの本体。普段の魅音とイコール。普段の梨花ちゃんは、黒梨花が仮面をかぶっている(まさに猫をかぶっている)もの。つまり村の会合時の魅音とイコール。そして、黒梨花の裏の人格が羽入。詩音とイコール。

 

表の人格である黒梨花が、普段は梨花ちゃんという仮面をかぶり、心の奥底に羽入という裏の顔を持っている。表の人格である魅音が、会合時は次期頭首様という仮面をかぶり、心の奥底に詩音という裏の顔を持っている。

 

構成が同じなのです。

 

 

 

梨花が二重人格であること、その乖離した人格が羽入だということを羽入の誕生で示しました。祭囃し編は、羽入が傍観者をやめ、表立って行動しだした物語です。これは、梨花の裏の人格が表出したことを意味しています。

 

祭囃し編とは、羽入という新しい登場人物が引っ越してきた物語ではありません。梨花ちゃんが羽入を名乗りでて、それをみんなが受け入れた物語なのです。

 

 

 

綿流し編

レナ「あ、話に聞いてた魅ぃちゃんの妹さんだね?!ひょっとしてあれかな。あれかな?!似てるね似てるね!!」

沙都子「に、似てるも何も…髪をおろしただけの本人ではありませんの…?」

梨花「……圭一が詩音だと言うから詩音なのですよ」

 

レナ「でも、本当にそっくりだね。 双子ってよりも、もうひとりの魅ぃちゃんみたいな感じ」

圭一「外見は似てるけど、雰囲気って言うか、中身は全然違うだろ。そういう双子も面白いと思うけどな~」 

レナ「圭一くんはそう思う?…中身もそっくりだと思うよ」

 

レナ「詩ぃちゃん、髪の毛を上げて結んだら魅ぃちゃんと見分けつかなくなるんだろうね」

圭一「ん、そうだなぁ」

レナ「じゃあさ。魅ぃちゃんが髪をほどいたら、やっぱり詩ぃちゃんと見分けがつかなくなるのかな」

圭一「多分な。…でもそれとこれと、何の関係があるんだよ?」

レナ「もしもだよ?双子の妹なんて話はウソで、あれは妹のフリをしてる魅ぃちゃんだったら、どう思う?」

圭一「質問に質問で返すようで悪いけどさ。…レナの言うとおり、魅音が詩音のフリをしていたとして、…そりゃ何のためだよ?」

レナ「そこを考えてほしいなぁ。…う~ん、ヒントにしては多過ぎかも。…はぅ」

 

 

 

綿流し編においては初め、圭一もレナも、詩音の存在を、魅音が騙っているものだと思いこんでいました。にもかかわらず、圭一たちはその嘘に乗ってあげて、魅音が詩音だと名乗るならば詩音だということにして、詩音として接することを選んでいます。後に本当に詩音という別人がいたことが明らかになるのですが、それまでは魅音が詩音という妹を演じているのだと、圭一たちは思っていたのです。

 

 

つまりこれは、圭一たちは、自分たちの仲間が突然別の名を騙りはじめたとしても、それが嘘であろうと何であろうと乗っかって、別人として接することを厭わないということを示しているのです。

であれば、祭囃し編において梨花が突然、自分は羽入だと名乗りだしたとしても、圭一たちはそれを受け入れ、羽入だと言うなら羽入として、梨花だと言うなら梨花として接することがありえるのです。

 

 

 

 

沙都子やレナが言うように、魅音と詩音の区別は、髪を下ろしているかどうかだけでしか見分けがつきません。なので圭一たちは、「髪を下ろしている彼女」に会ったならば詩音として、「髪を上げて結んだ彼女」に会ったならば魅音として、対応しています。これを梨花と羽入に当てはめればいいのです。

 

羽入の特徴である鬼のツノ。

「そのアクセを頭に付けている彼女」に会ったならば羽入として、「アクセを付けていない彼女」に会ったならば梨花として、圭一たちは対応することを選択できるのです。

 

羽入は自分でしゃべる時には、ツノを頭に付けてしゃべりだすのでしょう。その際に圭一たちは、羽入がしゃべっていると解釈し、羽入として接する。ツノを取ってしゃべりだしたなら、梨花がしゃべっていると判断し、梨花として接する。それが最後まで続くのが祭囃し編なのです。

 

 

 

 

 

 

 

さらに、大人たちの対応としては、暇潰し編に面白い伏線があります。

 

 

暇潰し編

梨花「…赤坂。…………東京へ帰れ。……あなたはさっさと東京に帰った方がいい。…でないと、ひどく後悔することになる」

……その少女は、梨花ちゃん以外の、………梨花ちゃんなんだけれども、梨花ちゃんじゃない、…………知らない少女だった。

……私が一緒に過ごした…古手梨花という少女は、……こんな喋り方はしない。

赤坂「……君は……誰だ。…梨花ちゃんじゃ、…ない」

 

 

これは、古手梨花の豹変ぶりに赤坂が驚き、梨花を梨花ちゃんとしてでなく別の人物として捉えているシーンであることがわかります。ひぐらしにおいては、梨花ちゃんのキャラが変わることを、「性格が変わった」ではなく「別人にすり替わった」と大人でも思ってしまうということが示されているのです。

 

 

 

祭囃し編

羽入「…あなたが冷静で落ち着きある選択をしようとも、勇敢で男らしい選択をしようとも。私はあなたを讃えましょう。それが、あなたの悩みぬいた選択である限り」

大石「………初めて会うお嬢さん、ありがとう。…なぜか、一番嬉しかった言葉です。…臆病な私に、時間を許してくれてありがとう」

 

 

 

これで、羽入が大石に話しかけるこのシーンの説明もつけられます。羽入が梨花の別人格ならば、大石が羽入(梨花)に対して「初めて会うお嬢さん」と表現することはおかしなことです。だって、外見は梨花のまま話しかけられているのですから、本来は「古手梨花さん、ありがとう」と大石は言わなければならないはずです。

 

それが暇潰し編の赤坂のセリフで解決できます。人格を変えて話しかけたなら、別人として扱うことがありえるという伏線なのですから、大石もまた、口調が豹変した梨花を、梨花とは別人として捉えて対応した、ということなのです。

 

 

 

 

 

 

 

疑問点はひとつ。

裏の人格が表出することが凶行のサインなのであれば、では梨花の裏の人格が表出した祭囃し編は、梨花が凶行に走る物語を表していることになってしまいます。それはちがいますよね。これはどういうことなのでしょうか。

 

これは、物語の核心にふれる部分となります。そこで綴られることになるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に記さなくてはならない、二重人格の特質が表現されているシーンがあります。罪滅し編の圭一です。

 

圭一は突然、鬼隠し編の記憶が蘇りました。ループしているわけではないのに、圭一に何が起こったのでしょう。これは、催眠性のフラッシュバックかと思います。

 

 

日常で人を催眠状態に入れる方法2

(抜粋)

もちろん、人は簡単に価値観は変えたくありません。変わることを強く妨げているのは人の「理性的な部分」なのです。過去の記憶や、現在の状況から、あらゆる情報を引き出して、「それが受けいれることができない理由」を探し出そうとします。それが理性(=意識=顕在意識)です。価値観のバリアーと考えるといいかもしれません。その理性が弱まった状態、(いろんな情報空間にあれこれアクセスできない状態)を作り出すことで、相手の理性的な思考力を弱め、こちらの誘導を受け入れやすい状態にすることが大切なのです。この受け入れやすい状態のことを、「催眠状態」と言ったり、「トランス状態」と言ったり、専門的には、「変性意識状態」と言ったりします。相手の理性(=意識)を弱めるためには、大きく分けて、・人間の身体的特徴を利用する方法・人間の感情的性質を利用する方法の二つがあります。

 

 

このときの圭一は、前日レナに過去を抉られたことによるストレスにより一睡もしていません。それが仲間たちの温かい言葉によって解放され、涙を流し、精神的にリラックス状態へと向かいました。さらに、嬉しさと開放感により感情を一気に昂ぶらせています。寝ていない身体的疲労と、感情爆発による理性と思考の鈍化は、潜在意識が浮上しやすい一種のトランス状態を導いたことが伺えるのです。

 

そういう状態は、記憶の亢進記憶錯誤を起こしやすいそうです。

 

 

記憶の異常 | 異常心理学

(抜粋)

記憶の量的異常

記憶の亢進

過去の記憶が異常に活発化して再生される現象で、記憶の増進とも呼ばれる。発熱や催眠状態、夢、てんかん発作、精神分裂病患者に多く見られる。

記憶の質的異常

記憶錯誤

全く経験したことのない出来事が実際に経験したかのように思い出される現象は虚偽記憶や偽記憶と呼ばれる。主に催眠状態での記憶の捏造によって起こるとされている。

 

 

 

悟史のことを秘密にされた圭一は、こいつらはホントの仲間じゃないって想いを潜在意識下に潜ませていた。それがトランス状態により一気に意識下に浮上してきた。それが魅音を罵倒するシーンだったり、おはぎを投げつけるシーンだったり、彼女らを殴り殺すシーン。

 

 

ポイントは、圭一が潜在意識下に潜ませているのが、上記で記した「もうひとりの俺」である悪心を持った二重人格の片割れであるということ。圭一の潜在意識にある悪心を持った「もうひとりの俺」は、除け者にされた疎外感から仲間たちを嫌っていたということなのです。それがその後の展開を想像し、彼女らに対して俺はこういう行動を取るだろうという未来予測も、同時に潜在意識に忍ばせていた。

 

が、このときの圭一の表の思考(顕在意識)は、それが逆に魅音たちの気遣いであったことが理解できた後でしたから、その悪心を持つ潜在意識に対して次々にケリを付けることができました。これはそういうシーンなのです。

カケラのリピート再生ではありえないのはわかりますよね。鬼隠し編に、魅音とレナがおはぎを作る園崎家でのシーンはないですから。これらのシーンが圭一の想像を表していることを示す、わかりやすい指標になっているということです。

 

 

 

 

潜在意識下に、悪心と悪心による未来予想図を潜ませているのは、何もこのときの圭一に限ったことではありません。

 

皆殺し編

圭一「あれは、……想像の中だったのかな。……何だかさ。そういうIFの世界が他にもあったんじゃないかって思うんだよ」

レナ「想像力が本当に豊かな人は、あらゆる可能性の世界を垣間見ることができるって言うもんね。

だから、圭一くんが本当に悩んで未来を見据えた結果の想像ならば、それは単なる想像の世界ではなく、確かに有り得た別の可能性の世界の情景なんだと思うよ」

 

レナ「魅ぃちゃんに打ち明けようと踏ん切りをつけるには、レナもちょっと時間が必要だった。…………決め手になったのは、あはは、夢なの。あの頃は布団の中でいつも一人悩んでた。だから、きっと夢の中でまで私は悩んでたんだと思うの。夢の中での未来では、お父さんは、その知らない女の人ともっともっと仲良くなってて、とうとうお家にまで連れ込むようになってるの。私は家に居場所がなくなって、だんだんと追い詰められていくの。それで、ちょっとしたささいな切っ掛けで、私はその女を殺してしまう」

圭一「…………嫌な未来だな。…夢の中だけで済んでよかったと思うぜ」

レナ「あれは、……夢だったのかなあ。……私はね、あれは…きっと、そのまま何もしないでいたらきっと迎えた未来なんじゃないかなって思うの」

 

皆殺し編の圭一、レナも「夢で見た」という前置きとともに、まるで狂気のカケラを再現するかのような想像を語っています。これもつまり、潜在意識下に悪心を持つ二重人格を潜ませている彼らだからこそ、悪心が描く未来予想図が夢の中で顕在化したことを示しているのです。無意識の思考というのは、眠っているとき、すなわち顕在意識が働いていないときに浮上することがあるだろうことは想像しやすいと思います。このときの圭一は、その顕在化、想起の仕方があまりに劇的だったためにファンタジー現象っぽく見えてしまいますが、やっていることは「潜在意識の想起」であるだけなのです。

 

フラッシュバックのような想起の異常は、罪滅し編の圭一だけですが、意識下に浮上しないだけで、無意識下にそういったストーリーを描いているのは、どのカケラでも同じであることを示しているのですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーひぐらし大学ミステリー研究会調査ファイル(了)

 

 

 

> TOP