3年目の祟り

 

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前々項(すべての伏線が示すその人物の闇と狂気)

前項(暇潰しに怪死事件を振り返る)を踏まえた話です。

ココ見てないと、これ以降の話がイミフだと思うよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3年目の祟りの立案、計画、実行、それはすべて鷹野の所業です。しかしもちろん、鷹野がそう考えるように仕向けていった梨花の計画が、その裏に潜んでいます。

 

 

 

暇潰し編

梨花「そして、さらにその翌年の昭和56年の6月の今日。…私の両親が、殺されます」

 

 

 

 

3年目に梨花は、自分の両親の排除を目論み、その実行者を入江機関に定めた。そのために、両親が入江機関の邪魔になる存在になってもらう必要があった。

 

カンタンなことです。両親が梨花をモルモットにすることに反対すればいい。両親がそういう行動をとるように、梨花は仕向けていったのです。その方法もこれまで通り。3年目の祟りの日の少し前に、両親にカートを盛った。興奮して感情的になるように仕向けた。

 

 

これまでは、特に梨花ママの突然の興奮(癇癪)が起きた際に、感情を抑えるために抗うつ薬を盛っていたと思われます。その興奮をそのまま他者にぶつけることがないように、梨花はコントロールしていたのです。だから、例えば最初の梨花の頭蓋に穴を開けて脳を観察する実験のときにも、おそらく興奮して反発したであろう梨花ママが、入江機関にそのまま反発をぶつけないように、セイヨウオトギリソウによって興奮を鎮め、入江機関の敵にならないようにしたのでしょう。それを、3年目の直前にやめたのです。むしろ興奮剤を盛り、興奮をそのまま入江機関にぶつける行動に出るように仕向けた。

 

 

 

実際は、梨花が実験の後に熱を出したからママがキレて診療所に乗り込んできましたね。その熱だって、おそらく自演です。ママが入江機関に不満をぶつけるキッカケを作れれば、なんだっていいんです。その不満を怒りに変換し、そのまま入江診療所に乗り込むような行動力を与えるカートを盛った。それまでじっと我慢していた(梨花によって我慢させられていた)分を、入江機関にそのままぶつけさせたのです。 

 

敵となった両親を、入江機関がどうするのかなんて、想像するのは容易です。1年目の祟りの犯人のように処分し、捜査に圧力をかけて中止させるでしょう。そうして何事もなかったかのように、梨花は無事、両親に消えてもらうことができます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ、実際の3年目の祟りですが、よくよく考えれば見えてきますが、相当変な展開がなされています。なんといってもあの遺書です。主人がいきなり死んだからいきなり自殺、おまけに遺書付き、その間わずか二十分!いつ遺書書いたんおまえ!こんな現象を警察が信じるはずもありません。鷹野も小此木も、こんな筋書きでうまくやれたと本気で思っているのだとしたら、幼稚園からやり直したほうがいいです。

 

さらに下記です。

 

カケラ 三番目の「検体」

ただ殺すなんて勿体無い。

鬼隠しにして、あのヒステリックな女を生きたまま、たっぷりと『研究』してやる…。

どんなデータが出てくるか、非常に興味深い。

何しろ一人は先代女王感染者なんだから…!

 

 

最後の一文は、もし鷹野が解剖したいと思っていたのが梨花ママだけなんだったら何しろあの女は先代女王感染者なんだから…!でないとおかしいです。”一人は” って言ってるんですから、もう一人である梨花パパのことも「どんなデータが出てくるか、非常に興味深い。」の対象であることが、この日本語からは読み取れるわけですね。

 

それもそのはずです。「ただ殺すなんて勿体無い」って言ってるんですから、それは貴重な生きた検体である梨花パパにも当てはまってしかるべきです。先代女王の梨花ママとの性交渉により、梨花パパの病原体にどんな変化があったのかとか、科学者なら興味が沸かないはずがありません。それでも本番では、梨花パパはただただ殺しています。勿体無いことこの上ないですね。

 

 

この妙な展開を説明するためには、鷹野側にトラブルがあったとするしかないと思います。3年目の事案は、展開をスピーディーにさえしなければそれほど不自然ではありません。体に違和感を覚えた梨花パパが病院に運ばれる。ここまでは問題ないでしょう。それから様態が急変し、生死の境をさまよう危篤状態が続いたとすればどうでしょう。

面会謝絶を作れるのですから、鷹野はその間に梨花パパを生体解剖できます。さらに、意識不明と説明を受けた梨花ママが、徐々に自責の念を募らせていったという展開も、こじつけとしては十分でしょう。精神的に辛い時間がずっと続けば、その間に遺書を認めていったのだろうという考えも不自然ではありません。

 

 

生体解剖をあらかた済ませた後に、梨花パパの死亡宣告をすればいい。これは2年目に沙都子でやろうとしていたことそのままですね。そしてそのまま梨花ママを拉致。遺書を沼前に。このような展開であれば、少なくとも本事案の展開よりはスムーズです。これが鷹野たちの狙いだったのではないでしょうか。

 

 

つまり鷹野側のトラブルとは、梨花パパがいきなり死んでしまったことだったと考えられるということです。梨花パパを生体解剖したかったのに、いきなり死んでしまったからできなくなった。予定通り数日後に死亡宣告をしてしまったら、死亡時刻のズレを警察に説明できない。とはいえ今更予定変更はできない。だから慌てて梨花ママを拉致。これが3年目の事案の裏事情だったのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨花パパがいきなり死んでしまったのは、H173 、トリアゾラムを盛ったことに起因するのでしょう。睡眠導入剤ですから、お祭りの喧騒に紛れて梨花パパに投与させ、眠りを誘うことが目的だったと思います。そしてふらつく(あるいは眠ってしまう)梨花パパを病院に連れてくる。あわよくば、覚醒後にH173による末期症状を発症してくれることを期待した。そうすれば生体解剖の大義名分が立つ。そして生体解剖。これを予定していた。

 

 

 

ところが梨花パパは死んでしまった。

 

 

 

 

梨花パパはなぜ死んでしまったのでしょうか。

果たして本当にH173のせいなのでしょうか。

 

 

 

統合失調症における多剤併用と心臓突然死の関係は?

(抜粋)

しかし,抗不安薬や睡眠薬として使用されるベンゾジアゼピンの併用は,複数の大規模調査で死亡リスク増加との関連が明らかにされています(文献2)。また,大量の抗精神病薬投与例では死亡リスク増加が報告され,米国の大規模な検討結果では,第1世代抗精神病薬のクロルプロマジン換算で1500mg以上の場合,有意に死亡リスクが高まると発表されました(文献3)。わが国で行われている多剤・大量処方の中で,特に抗精神病薬の大量処方やベンゾジアゼピンの併用が死亡リスク増加に関連する可能性があります。抗精神病薬間の多剤併用は,結果として大量投与になり,死亡リスクを高めているのかもしれません。 

抗精神病薬と心臓突然死との関係は,かつてチオリダジンなどで話題になりましたが,再び大きな注目が集まったのは,Rayら(文献4)の2009年の大規模調査からです。この報告では抗精神病薬を服用していると心臓突然死のリスクが倍増し,その用量が増えるに従って,心臓突然死リスクが高まるとの結果が得られました。

 

 

29P-pm412

(抜粋)

三環系抗うつ薬(Tricyclic antidepressants; TCAs)はうつ病等の治療に用いら れているが、過量服用により不整脈等の重大な副作用が発生しやすく、中毒事故 が多発している。

 

 

ベンゾジアゼピン系薬剤と抗精神病薬の併用は、突然の心臓発作を引き起こす可能性があるのだそうです。梨花パパは、山狗からH173を服用させられる前に、別で抗精神病薬を摂取していたと考えれば、これが起こってしまったとしても不思議ではありません。

 

 

 

そうです。

セイヨウオトギリソウです。

 

抗精神病薬と同等の効果があるとされているこの薬草を、梨花はパパに祟りの日の当日に盛っていた。そこにきて、鷹野たちはパパにH173を盛った。突然の心臓発作を起こしかねない薬の併用が、なされてしまったのです。

 

 

 

私は今の所、この併用は梨花が意図したものだと思っています。

 

梨花がそうした理由は、おそらく、パパの生体解剖がなされると、パパの脳から雛見沢症候群の病原体(異常プリオンタンパク質)が検出されないであろうことが予測できたからだと思うのです。

 

 

入江機関の研究と、その勘違いを最後まで利用したかった梨花は、「雛見沢症候群は村人全員に感染している」という彼らの誤認を改めてほしくなかった。勘違いしたままでいてくれたほうが、梨花にとって都合がいいのです。なぜなら、梨花が起こす謂わば「薬物中毒事件」を、彼らは薬物によるものではなく寄生体によるものだと思ってくれているわけですから。

 

 

 

パパを解剖して、そこから病原体が発見されなかったとなれば、雛見沢症候群の感染状況に見直しがなされてしまう。これからも起こすつもりの異常事件も、入江たちは即座に雛見沢症候群のせいだという先入観のもとに動いてくれるはずだったのが、「感染してい可能性も考えれば自分たちの出る幕ではない」などとなってしまうことだってありえてしまう。

 

それを防ぐために、梨花はパパの生体解剖はできなくしたかった。だから、鷹野たちの行動を先読みし、前もってパパにセイヨウオトギリソウを盛っておくことで、トリアゾラムとの禁忌の併用による心臓発作が起きて、パパが解剖前に死んでくれることを狙ったのではないでしょうか。

 

 

 

ちなみにママの解剖は問題ありません。梨花の脳にある遺伝性の異常プリオンはママから受け継いだものですから、ママの脳にも当然この異常プリオンがあるのです。

 

 

 

 

 

 

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