4年目の祟りー悟史の事情

 

 

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4年目。

 

この4年目の祟りは、様々な人物の思惑が交錯し、かなり複雑になっています。ですので、パートを3つに分けました。まずは悟史の計画から追っていくことから始めたいと思います。

 

 

目明し編

粗大ゴミ置き場が目に留まった。叔母はこの粗大ゴミ置き場に、使えそうな家具があると見逃さない。先日も、適当な大きさのタンスを見つけ、運ぶのを手伝わされた。…叔母に、この机が新しく捨てられていることを話せば、きっと拾いに行こうという話になるだろう。彼は、今日まで肌身離さずに持っていたソレを、茂みに横たえる。

 

 

 

上記は事件当日の悟史の思考ですが、ここから悟史の計画を読み取ることができます。悟史は叔母をゴミ置き場におびき出す予定だった。そして、目的の机の後方に隠しておいたバットで一閃。こんな計画なんでしょう。しかし、この計画を踏まえた上での実際の悟史の行動は、不可解そのものとなっています。

 

 

午後8時11分

悟史は夕食後、こっそり窓から外に出た。

悟史は裸足だったが、気にもせずそのまま駆け出す。

 

 

何で悟史は窓からこっそり家を出るのですか?しかも裸足で。これはめちゃくちゃおかしなことです。だって、こっそり出たってことは、叔母に外出を知られたくなかったからということになります。

 

 

叔母をゴミ置き場におびき出す算段なんですよ?「先日も手伝わされた」「拾いに行こうという話になる」って悟史は想定しているんだから、当然、ゴミ置き場におびき出すためには悟史と一緒じゃなきゃ成立しないじゃないですか。

 

悟史「おばさん、ゴミ置き場でいい机をみつけたんだ」

叔母「なら、夕飯食べ終わったら行こうかい。あんたも運ぶの手伝いなさい」

 

おびき出すための会話は、こんな展開になるのは確定的じゃないですか。それなのに叔母の知らないところで家から飛び出してしまったら、叔母はいつまでたってもゴミ置き場に来ないじゃないですか。それとも「悟史は部屋から出てきやしない。仕方ない、私だけで行くか」なんて叔母が考えることがありえるのですか?そんなの絶対にありえません。なんとしても悟史を連れて行こうとするか、あるいは、お祭りから沙都子が帰ってくるのを待ってから、沙都子と来ようとすることになるはずです。その展開はマズすぎるでしょう。

 

仮に、叔母と一緒に夜道を歩いているところを見られたくないと思ったんだとしても、それなら「おばさん、僕、先に行ってるね。あとですぐ来てよ」と言えばいいのですから、窓から出る必要ないどころか、やっぱり玄関から出ていかなきゃダメじゃないですか。

 

外出を知られたくなかった相手が叔母以外だ、なんて可能性は皆無です。なぜなら、悟史がこっそり窓から出たにもかかわらず、叔母は悟史の外出を知っているってことになるからです。ありえません。

 

叔母が先にゴミ置き場に出発して、悟史が後発の可能性も皆無です。窓からこっそり出る理由がないからです。家に誰もいないんですから、玄関からこっそりと外に出ればいいだけですから。

 

 

 

 

 

 

 

悟史が窓から出ることは、何をどう考えても不自然でありえないということがわかるかと思います。それでも悟史は窓から出た、というのが真実です。彼の意図はなんだったのでしょう。それを読み解くために必要なのは、彼の事件前日辺りの様子から思考を追うことです。

 

 

 

 

悟史「沙都子!!大丈夫か沙都子…!!」

沙都子「にーにー!!にーにー!!わああぁあぁああぁぁぁん!!」

悟史「ど、…どういうことだよ魅音ッ!!!沙都子が何をしたよ?!僕たちが何をしたよ?!何でいつもいじめられなきゃならないんだよ!!ええ?!どうしてだよッ!!!お前に僕たちの何がわかる!!何がわかるってんだよッ?!父さんや母さんを村ぐるみで追い詰めて…散々いじめて!!そして今度は僕たちか?!それが園崎家のやり方なんだろッ?!どこまでも村の裏切り者をいじめ抜く!!そんなに楽しいかよ!!弱い者いじめがそんなに楽しいかよ!ええぇッ?!」

 

 

悟史「…………先日は、……ごめん」

詩音「ぁ、…ぅ…、わ、私こそ、……ごめんなさいです…!」

悟史「…魅音は謝らなくていいよ。…僕がどうかしてた。…僕は、…僕たちをここまで追い込んだ奴らを絶対に許しはしない。…そいつ等は、魅音のとても近くにいるのかもしれないけれど。でも、…決して、魅音じゃなかったんだ。…だから、…僕は君にだけは謝ろうと思って」

 

 

悟史「僕より、……沙都子の方が、…辛い」

詩音「…沙都子、…大変なことになっていますね…。…大丈夫なんですか…?」

悟史「…あれが、…大丈夫なように見えるのかよ…?」

詩音「ご、ごごご、ごめん!ごめんなさい…!ごめんなさい…!」

 

 

悟史「ほら、…明日は綿流しのお祭りじゃないか。沙都子を、祭りに連れ出してやってほしいんだ。…ね、…魅音。…明日の夜だけ、沙都子を頼めないかな…。あれだけの暴言をぶつけて、…それを謝るついでにこんな事を頼むなんて、…悪いことだとは思ってるけど…。……魅音だけが頼りなんだ」

 

詩音「…うん。……わかった。…明日の晩だけ、…だよ?」

悟史「あははは…。出来たら、明日の晩だけじゃなく、これからもずっとがいいなぁ」

 

悟史「…魅音」

詩音「…何?」

悟史「沙都子のこと、……頼むからね」

詩音「…………」

悟史「……変なこと頼んで、ごめん。…じゃ」

 

 

 

この悟史と魅音(ホントは詩音だったけど)の会話の中で、とても引っかかる部分があります。それは、沙都子を託す相手が魅音であることのおかしさです。

 

前日に、悟史は魅音をめっちゃ敵視することになる事案が発生しました。そしてその翌日のこの電話の中でも、まだ魅音に敵意を向けている様子が伺えます。謝ったついでになんだけど、って切り出してますが、「あれが、…大丈夫なように見えるのかよ」っていう直前の暴言は謝っていません。つまり最初の謝罪は、頼み事をしなきゃならないからとりあえず形だけ、上辺だけ謝っとけって考えであることが透けているではないですか。こんな状況で、なんで悟史は魅音に沙都子を託せるのでしょう?

 

 

祟殺し編の圭一とは決定的に違います。このときの圭一も、悟史とシンクロするかのように、前日に魅音らと対立し、激昂し、その後電話で魅音(ホントは詩音だったけど)に沙都子を頼むと発言する流れになるわけですが、圭一の場合はお祭りの間だけの話であり、それ以降の面倒の話を含んでいません。

 

祟殺し編

…沙都子を祭りに連れて行くのは、魅音にやらせると都合がいい。…あいつの叔母が確か民生委員だとか言ってた。…魅音に、何としてでも沙都子を祭りに連れて行けと焚きつければ、…あいつのことだ、その辺りをうまく使って、沙都子を祭りに連れて行けるはず…。

 

圭一「俺、…実はちょっと明日は用事があってさ。…祭りには行けない。だから沙都子を、魅音が連れて行ってやってほしい。なぁ、魅音。……明日の夜だけ、沙都子を頼めないか…?」

詩音「……………私、…………嫌だって、…言ったじゃない…。私なんかに…押し付けられても…困るって……!」

圭一「…べ、……別に押し付けるつもりなんかないよ。…明日の夜だけでいいんだ」

 

 

前日敵意を向けた魅音に圭一が頼みごとを言ったのは、お祭りに沙都子を呼び出すのに都合がいいからであって、つまり「利用」であって「信頼」ではありません。

 

でも悟史は、「これからもずっとがいいなあ」って言ってるんですから、事件後にひとりぼっちになてしまうかもしれない沙都子のことを魅音に託している意図も含んでいることは明白です。これは「信頼」無くしては出てくるはずのない発言なのです。

 

前日にあんなことがあって、お前らを許さないって発言があって、さらに翌日の電話でもまだ許してる様子もなくって、それでも沙都子のことを頼むって、魅音を「信頼」しているなんて、彼の心持ちと言ってることがあべこべです。確かに、魅音への敵視は間違ってたって謝罪しています。でもそれは、たとえ言葉通りに受け取ったとしても、魅音の評価がマイナスだったのがマイナスじゃなくなったってだけであって、プラスに転じる要素であるはずもありません。

 

 

 

悟史は託す相手を間違っているのです。レナには悩みを相談していた。魅音を嫌うようになっていったと、罪滅し編でレナは証言しています。ならば、悟史が沙都子を託す相手は、少なくとも魅音よりは信頼できるレナでいいじゃないですか。

 

 

沙都子の周りの環境が好転するためには、魅音に沙都子を特別視してもらうしかない。たとえ村の雰囲気が沙都子を歓迎しなくても、あの園崎の次期頭首の魅音が沙都子を面倒見ているってわかれば、住人の態度も変わるはず。つまり、現状を打開するためには、魅音に変わってもらうしかない、だから魅音に沙都子を託すって、誠意をもって伝えよう。そうすれば魅音の心に響く。そうすれば何かが変わるはずだ。

 

 

って、このような思考であれば矛盾はないかもしれませんが、ただそれはとても冷静で理性的な考えです。果たして殺人を犯そうっていう極限まで追い詰められた精神状態の悟史が、このような先の展望を見据えた冷静な分析ができるのでしょうか。とてもそうは思えません。だって、嫌ってる魅音に託すことが最善だと考えられるなら、それって感情よりも理を優先させられるってことになりますから。普通の状態の人間ですら不可能に近いですよ、感情よりも理を優先させるって。私はちなみにこれができる人間を、私含め、一人も知りません。

加えていうなら、理性よりも感情が上回ってしまうのが雛見沢症候群という症状だったはずです。その渦の真っ只中にいる悟史に、感情と正反対な思考なんてありえないと思うのです。

 

 

それに、沙都子を頼むって2回も念を押しています。電話の切り際も、一番大事なことだといわんばかりに念を押しています。魅音はわかったよってもう言っているのにも関わらず。一体悟史は何を考えているのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

これらの状況を踏まえて。

事件当日を想像してみましょう。

 

さあ、こんなに必死に頼まれてしまった魅音は、お祭り当日どうするか。当然、沙都子をお祭りに強引な手を使って誘うことになります。そしてそれを受けた叔母がどういう感情になるのか。想像するのに難しいことはありません。

 

沙都子「お祭りに行ってきますわ。民生委員の支援活動の一環ならば仕方がございませんもの。」

叔母「ったく。いい身分だね。」

 

嫌味を漏らす叔母。おそらく悟史が行動を起こしたのは、この瞬間です

 

悟史「そういえばおばさん。ゴミ置き場に新しい机をみつけたんだ。あとで取りに行こうよ」

 

これを受けた叔母は、こう言う。

 

叔母「そうだ、沙都子!あんた、遊んでくるんだったら、帰りにその机持って帰ってきなさい。家のことほっぽり出して遊び回ってくるんだから、それくらいできるでしょ?」

 

と、こうなる。

 

 

 

沙都子は嫌な気持ちになったでしょうね。なんで私一人で机をもって帰ってこなきゃならないんだと。ムカつくわ〜と。お祭りの最中も、その嫌な気分を引きずっています。さらにここで、悟史の電話での発言が効いてくるのです。沙都子を頼むとあんなに念を押された魅音が、どういう行動に出るのか。

 

お祭り終了後。

 

沙都子「私は帰りますわ。」

魅音「送っていくよ。悟史に頼まれてるから。一人で夜道を帰す訳にいかないでしょ。」

沙都子「実は寄らなきゃならないところがありますの。だから見送りは結構ですわ。」

魅音「こんな夜に?どこに?」

 

ゴミ置き場の件を漏らす沙都子。

 

魅音「あんたのおばさんは、ホントに酷いやつだねぇ〜。一人で持てるようなものじゃないでしょ、それ。わかったよ。悟史に頼まれてるし。私も手伝ってあげる。一緒に持って帰ろう。」

 

 

と、こうなる。

 

 

 

 

 

 

 

一方、悟史は窓から家を飛び出しました。ゴミ置き場に伏せて待機です。誰にも見られていません。叔母に外出したことを悟られていません。そのゴミ置き場にやってくるのは、叔母ではありません。沙都子と魅音です。

 

 

 

恐ろしいですね。

悟史の計画とは、叔母をゴミ置き場におびき出すことではなかった。叔母を殺すことではなかった。おびき出したかったのは、沙都子と魅音のほうだった。沙都子と魅音を殺すことこそ、悟史が立てた本当の計画だったのです。

 

 

 

 

 

 

この考え以外に、悟史が窓から裸足でこっそり家をでることに説明をつけることはできないはずです。悟史は、沙都子と魅音の失踪事件の時間帯のアリバイ証言を叔母にしてもらうために、叔母に外出を知られるわけにはいかなかったのです。だからこそ、靴を玄関に残したままこっそり窓から出る必要があった。

 

加えて、この考えだからこそ、悟史のセリフのすべてに説明がつけられると思います。悟史は別に魅音を許していなかった。信頼など微塵もしていなかった。僕たちをここまで追い込んだ奴らを絶対に許しはしない、…そいつ等は、魅音のとても近くにいるのかもしれないけど、魅音じゃなかったんだっていうセリフは、魅音は許すけど魅音の婆さんとかは許さないって意味じゃなかった。これは、祟殺し編の沙都子と同じだったのです。

 

 

祟殺し編

沙都子「………さっきまでは…圭一さんが殺人鬼なんだと思ってたけど、……私、わかりましたの。……あなたの目を見ていたら。圭一さんが、……人殺しなんかするわけがない。………圭一さんの体を…何か悪いものが乗っ取って……悪事に駆り立てただけ」

「死んじゃえ人殺しぃいいいぃ!!返してよ!にーにーを返してよ!!梨花やお母さんを、……圭一さんを返してよ!!私は…お前なんかには負けないんですのよ…!!祟りなんかに…負けてたまるもんですかッ!!お前になんか絶対に負けない!みんなを奪った…お前に絶対に負けたりなんかしないいいぃいいいぃいいいいいぃいッ!!!」

「………こ、……こいつ……!最後の……最後で………、…圭一さんの…ふりを……!!しゃべるなッ!!圭一さんの口調でしゃべるなッ!!落ちろ!!落ちてしまえええぇええぇええぇええぇぇぇ…ッ!!!」

 

 

沙都子は、圭一の悪事を「圭一の体を乗っ取った存在」の仕業だと思ったのですね。これとまったく同じ。悟史は、魅音の北条に対する仕打ち、悪事を、魅音の体を乗っ取った何者かの仕業だと結論付けた。だから、「人間の状態の魅音」には謝った。沙都子が圭一に対する誤解を改めたように。でも、「人間じゃないほうの魅音」は殺すつもりだった。沙都子が圭一を突き落としたように。

 

こんな考えだったから、オヤシロさまの祟りがどうのと、電話で悟史は言い出したのです。圭一を橋から突き落とす直前の沙都子と、シンクロしている状態だったのです。

 

 

 

 

これからもずっとがいいなぁって言ったのは、信頼していたからではなかった。沙都子、魅音、同時にあの世に送ってやるから、ずっとあの世でわちゃわちゃやってろ、ってことだった。僕たち家族に迷惑のかからない場所でいくらでも騒いでてくれ、ってことだった。

コワッ。

 

 

僕たちをここまで追い込んだ奴らを絶対に許しはしないってセリフの

「奴ら」の内訳は、「沙都子と魅音」だった。悟史が、沙都子に悪感情を募らせていった伏線は数多く存在します。沙都子さえいなければ、と。沙都子が悟史を追い詰めた。

だから、

「悟史をここまで追い込んだ奴」=「沙都子」←絶許

になるし、

「僕ら家族をここまで追い込んだ奴」=「魅音」←絶許

になる。

 

 

この相関図において、悟史は叔母に敵意を向けることはなかった。それは、沙都子さえいなければって感情のほうが優先していたため、沙都子が消えれば、叔母のヒスが自分に飛び火することはない、平穏が戻る、という構図が見えたためでしょうね。ちょっと考えれば、叔母さえいなければ沙都子は正常に戻るとわかるはずですが、ひぐらし本文中に「沙都子さえいなければ」って文章は複数あるのに、「叔母さえいなければ」って文章はひとつも存在しません。

 

 

ですから、悟史の悪の思考は、まず沙都子を消すでしょ、ってところからスタートするってことなんでしょうね。これがすでに大前提になってしまっていた。だからこの前提が外せない以上、悟史にとって叔母は消さなきゃならない対象にならなかった。

 

父さんや母さんを村ぐるみで追い詰めて、散々いじめて、そして今度は僕たちかって悟史が怒ったということは、両親を「被害者」として受け取っているってことです。となれば、叔母だって悟史にとっては「沙都子をいじめる加害者」かどうかは別として、「園崎の被害者」であると捉えるのが自然となります。

 

 

 

 

 

 

また、「悟史、野球チーム辞めてアルバイトするってよ」の詳細を追えば追うほど、悟史の思惑が透けていきます。さらっと読めば、悟史は沙都子の誕生日プレゼントを買うためにバイトを始め、バイトをしたいから野球チームをやめることにし、やめる際にもらったバットで叔母ぶっころっちゃおっかな〜、あとぬいぐるみ喜んでくれるかな〜、みたいなカンジですよね。でも時系列を追うと、決してそうではないことがわかるのです。

 

 

カケラ 休部届け

悟史くんが、雛見沢ファイターズを辞めたいと言い出した。

悟史「実は僕、アルバイトを始めるんです。それで、あまり野球に出られなくて…」

 

目明し編

入江「内緒にしてくださいよ?……実はですね、悟史くん。……チームを抜けたいって、…そう漏らすんですよ最近」

詩音「え?……ど、…どうして……」

入江「疲れるから、だそうです。…というのは表向き。…沙都子ちゃんと一緒にいる時間を増やしてあげるためじゃないかと思ってます」

 

 

悟史は、野球チームを辞める際にちゃんとバイトのことを話しています。にも関わらず、目明し編の入江のこのセリフは一体なんなんでしょうか。「疲れるからだそうです」って、なんでバイトやるからって言わないんですか?

 

これは、時系列的に下記の目明し編のシーンが、上記休部届けのシーンより前であるとしか考えられないことになりますね。となればつまり、悟史は、アルバイトを始める前からアルバイトと関係なく、野球チームを辞めたがっていたことが分かるわけです。であれば、アルバイトを始めるからチームを辞めるわけではなく、チームを辞めたいからアルバイトを始めた、という考えであることが透けているではないですか。

 

 

チームを辞めたい理由はなんなのか。

それもちゃんと伏線があります。

 

 

カケラ 部活結成

魅音「そ、そうかな…!………今日、学校が終わったら、沙都子を遊びに誘ってみる?」

悟史「…家に帰ると叔母さんに色々言われて、表に出られなくなってしまうかもしれない」

魅音「あは、なら簡単だね。家に帰らずに遊べばいいんだ」

悟史「でも、帰りがあまりにも遅くなると、何の道草を食っていたんだと…」

魅音「えっと、ならさ、あれだあれだ!部活動に加わったっていうのはどう?」

悟史「部活?」

魅音「うん。部活ってことにして、学校で遊んでから帰ればいいじゃん。だって、学校から帰らないでそのまま遊んでる男の子だって大勢いるんだしね。全然、問題ないよ!」

悟史「あ、でも、服を汚すとまた叔母さんに…、」

魅音「ふふん、ならさ、アウトドアじゃなくてインドア中心にすればいいわけよ!それなら服も汚れないしね」

 

 

本音が漏れちゃってます。

部活だろうがなんだろうが、服を汚すと叔母に何言われるか、みたいなことなんですよね。なら、悟史が野球やってることに対して、野球やった帰りに悟史がどんなこと言われてたかなんて、想像に難くありません。それが苦痛だった。それしか考えられません。

 

野球で帰りが少し遅くなることもあったかもしれませんね。そしたら、道草うんぬん言われるわけでしょ。それも苦痛だった。

 

目明し編

悟史「……じゃ、僕はそろそろ帰るよ。叔母さんに野球の帰りに買い物してくるよう、頼まれてるから」 

悟史くんが領収書だらけの財布を漁り続けるのを無視して、会計を済ます。

悟史「あ、…ありがと。助かったよ。…僕は買い物はどうも苦手でさ」

 

 

財布が領収書だらけなんだから、つまり買い物をしまくってるってことです。家計簿なんて通常月単位でつけるんだから、レシートが溜まるってことは、ほぼほぼ毎日買い物しているってことです。ほぼ毎日、苦手な買い物を押し付けられているという状況なんですから、それを抜け出したかったんだろうという推測が可能です。

 

そのために、バイトは都合がよかったんでしょうね。お金を稼いでいるっていう名目があれば、叔母も文句をつけがたい。なおかつ帰りが夜になってもおかしくないので、夕飯の買い物を頼まれなくてすむ。つまりぬいぐるみがどうこうって話は、周りが納得するからって理由で作ったこじつけであること。沙都子のためという理由は建前であることが分かるということです。

 

 

そしてこの野球の帰りのお使いの経験こそが、悟史の計画の発案のキッカケであることも見えてきます。叔母は野球をしてくる帰りに買い物を頼むのですから、家のことをほっぽりだして遊んでくるなら、その帰り道に家事の助けになる何かをしてきなさいって考えであることになるわけですね。だから、沙都子に祭りに連れ出すように魅音に頼んだのです。叔母に机のことを言えば、祭りで遊んでくる沙都子に、帰り道にそれを持って帰ってくるように言いつけるだろうことが、悟史には読みやすかったからだったのです。

 

 

 

 

 

 

 

悟史は、ゴミ置き場に沙都子と魅音をおびき出した。いくら女の子でも人間を2人相手にしなきゃならないため、スキをつく必要があった。だから注意を向けさせることのできる机を選んだ。

 

撲殺後は当然、その死体を埋めるつもりだったが、とりあえずすぐに帰宅して、ずっと家にいた体を装う必要がある。死体を埋めるのは深夜でいい。叔母はずっと僕が家にいたと思いこんでいる。沙都子と魅音が失踪したことが翌日以降発覚し、警察が捜査に乗り出したとしても、叔母は自分のアリバイを証言してくれるだろう。

 

 

 

さらに動機の面でも、アルバイトは役に立った。貯めたお金で沙都子にプレゼントを買う予定だった。そのためにわざわざアルバイトまでした。『そんな悟史が、沙都子を殺すなんてことをするわけがない』

 

監督「大石さん。悟史くんは、沙都子ちゃんのためにずっとアルバイトをしていたんです。そんな彼が、沙都子ちゃんを殺すわけないじゃないですか。ありえません」

 

監督にこう言ってもらえる。

それも狙いだったのです。

 

 

 

 

お祭り当日、悟史は魅音に沙都子を頼むとしつこく迫りました。沙都子の付き添いで一緒にゴミ置き場に来るはずだという読みで、誘導をかけたつもりだった。ですが運が悪いことに、悟史が電話で話した相手は、魅音ではなく詩音でした。そのせいで、悟史が「頼んだよ」という熱意の依頼は詩音にしか届かず、魅音にその熱意が伝播することはありませんでした。だから魅音は、「沙都子のことを悟史に強烈に託された」という感覚にならず、「沙都子をお祭りに誘う依頼を受けた」という単なる些末な作業として捉えた

 

だから、魅音は、お祭り終了後に沙都子を家まで見送るなんて、ましてや机を運ぶのを手伝うなんて、そんなことは思い浮かびもしなかったでしょうね。冷血女ですから。悟史に頼まれたことはやったし、また明日ね〜沙都子〜ってなもんでしょう。空気読めないKYですから。ゴミ置き場にて待機する悟史の前に、魅音が来ることはないのです。悟史の計画は、前日からすでに破綻しちゃってたんですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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