2章の攻防 入間美兎のターン

 

 

 

■TOP

≫次へ

≪前へ

 

 

 

 

 

美兎ちゃんもただ劣勢だったわけではありません。いくつか仕掛けていました。第1手。モノチッチです。

 

 

 

ゴン太くんが発見したのは2章冒頭。これは1章で見つけられなかったというよりは、美兎ちゃんが2章より作り出したと捉えるほうが自然だと私は思います。その理由は、1章学級裁判を振り返れば見えてくると思います。

 

 

 

 

1章学級裁判、赤松ちゃんには作戦がありました。首謀者をあぶり出すという作戦です。自分が犯人にもかかわらずそれを隠して進めたのは、本当の犯人が自分だと知っている首謀者にとって最原くんがクロで決定しそうな流れを拒否するはずで、そういう反応を拾えるはずだという思惑があったからです。しかし実際には誰からもそういった反応は見られず首謀者なんていなかったんだ、となってしまいましたね。

 

 

 

では美兎ちゃん視点に立ってみましょう。美兎ちゃんは赤松ちゃんが犯人だと分かっていなかったのではないでしょうか?だから最原くんがクロだという流れに逆らえなかった。逆らいようがなかった。モノクマに聞けばいいじゃないか。だからモノクマも分かっていなかったというのが私の結論です。なぜモノクマも分かっていなかったのか。それは管理者権限を奪われていたからです。

 

 

 

管理者権限からは、おそらくシステムとしてクロが認定できる仕組みだと思います。それがデジタル世界の特徴ですね。例はスーダン5章です。プログラム世界での殺人で、誰が殺したのか犯人にも分かっていない状況でモノクマだけが知っているということでしたね。あれは映像から判別したというよりは、クロが自動で判別できるシステムが組まれていると考えたほうがスッキリすると思います。先述の通り、実際この才囚学園には固定の監視カメラがありません。そんなものなくてもクロの判定が運営サイドには可能という理屈が通るわけです。

 

その意味で、このV3は管理者側ではクロを拾えていたハズです。投票結果反映スロットも管理者権限側で、こちらはクロの答えを事前にインプットされているのでしょう。しかしその中身を知る権限が美兎ちゃんモノクマにはなかった。この形であればモノクマはクロを把握している必要はありません。スロットが知っていればいいので。

 

つまりモノクマにはクロが誰なのかわかっていなかったのです。

 

 

 

 

 

この構造は、生徒として参加してしまった美兎ちゃんにとって問題となってしまった。1章で美兎ちゃんは犯人が誰かを推理する必要が出てきてしまっていた。間違ったらお仕置き対象です。間違えられなかった。たまたま1章では自白を得られたものの、美兎ちゃんは他の生徒と同じくヒヤヒヤだったのです。

 

美兎ちゃんはこれを反省した。2章ではこの問題を解決するために、超小型カメラを学園に散りばめて決定的瞬間を手にすることを狙った。そうすれば裁判でのお仕置きのリスクは減らせる。みんなをその犯人に誘導することは難しくとも、とりあえず答えを知っている状態で問題に挑むだけでも難易度は格段に下がる。

 

 

 

 

実際に2章学級裁判で、美兎ちゃんは斬美さんにターゲットを絞りきっています。具体的な犯行手順などは分かっていないため、論理的な言論にはできずに皆を納得させることはできませんでしたが、ともかくクロだけでも分かっておくことは重要だった。そのためのモノチッチだったのです。

 

 

 

このセリフ、斬美さんを含めた全員が嘘だと思ってるわけですが、私だけ嘘だと捉えていません。おそらくモノチッチによる決定的瞬間を撮影した写真があるのです。最悪それを提示して投票に持ち込むことを考えていた。

 

いつどうやって撮ったのかは、ドローンとか言い訳を考えていたのでしょうか。苦しそうな言い分なので、おいそれとその写真を提示することができなかったのでしょう。捏造写真などと逆に美兎ちゃんが疑われては元も子もないですし。そのため、なんで今になってとかいうツッコミには言い訳が難しそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美兎ちゃんの仕掛けた手はそれだけではありません。第2手。それは『裏メダル』です。

 

 

 

これはただのイベントとして捉えがちですが、かなり不自然です。美兎ちゃんはこれを『裏メダル』と称し、後にモノクマから否定された際にガセだったのかと発言しています。

 

 

 

 

ガセってどういうことでしょうか。美兎ちゃんは一体そのガセ情報をどこから仕入れたのでしょうか。その説明がどこにもなされていません。

 

それに、美兎ちゃんの最原くんに対する話口調にデジャブを感じませんでしょうか。それは4章コロシアイシミュレーターに皆を案内する際の口調とほぼ同じだということです。

 

 

 

 

 

 

 

4章で美兎ちゃんは何をしたかったか思い出してください。王馬くんを殺そうと思っていたのでしたね。それと同じ。この裏メダル云々でのカジノへの誘導は、最原くんを殺そうと思っていたと考えられるのではないでしょうか。

 

具体的な方法は分かりませんが、まあ下記の発言から、スロットマシンに細工してなんらかのトリックを使うつもりだったのかなあと。未遂の犯行なので情報なさすぎて、ざっくりとしか分かりません。

 

 

 

 

しかしそう考えれば、その後の言動にもいろいろ説明がつけられます。なぜガセ云々の話になったのかというと、それは最原くんとの内緒話を他の人にも聞かれてしまっていたからです。こっそりと最原くんだけを誘導し殺そうと思っていたのにそれができなくなってしまった。だからモノクマを召喚し、美兎ちゃんの『裏メダル』云々の情報はデマだよと確定させた。それで自分の思惑を有耶無耶にしたかったのです。

 

先述しているとおり、美兎ちゃんはなんとかしてクロになる必要があります。それしかログアウトの手順がないからです。その一手を2章でも仕掛けていたのです。しかしそれも失敗に終わりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ諦めていません。第3手。これこそがこの物語の結末にまでかかわる最重要の一手となりました。それが、『毒殺』です。

 

 

 

 

様々な毒は最原くんの研究教室にあります。その中にあったのでしょう、超遅効性の毒が。これを摂取してしまったのが、そう、百田くんだった。

 

 

 

 

 

 

百田くんの不調が描写されたのは3章からでしたね。しかしその不調の出発点はどこだったのかというと、よくよく観察すれば見えてきます。この2章だったのです。

 

 

 

 

ここです。ただ逃げているにしては、何か様子がおかしいですよね。最原くんもそれを感じ取っていますが、彼は結局ゴン太くんの異変と百田くんの様子のおかしさとをリンクさせてしまいました。しかしそれだけでは百田くんの、何か体調悪そうな表情に少々違和感があるように見えます。百田くんの不調の出発点はここだったのです。

 

 

 

 

王馬くんもそれを嗅ぎ取っています。彼は嘘を見抜くのが得意。百田くんがただゴン太くんから逃げ回っていたわけではなく、なにか別のことをしていたということを感づいたというシーンなのです。

実際、2章の事件当夜の百田くんの足取りはまったく描写されていません。体調不良でどこかで吐いていたなどが想像できますが、それを悟られないように嘘をついたのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

ではこの直前に百田くんになにがあったか。それは食堂での出来事です。斬美さんがせっかく作ってくれた食事を食べないメンバーが多くいたため、それを百田くんが全部食べるという展開になりました。これが原因だと考えられます。

 

 

 

 

 

順を追って説明しましょう。美兎ちゃんは遅効性の毒による殺人を計画しました。もちろんそれが達成されれば学級裁判となり、美兎ちゃんはそれを切り抜けなければなりません。そのため、まず毒とは限らないという状況を作り上げたかった。

 

まわりは実際、5章までの百田くんの不調をウィルスか何かと関連付けて認識しています。もちろんそれが学級裁判となり百田くんの死に「クロがいる」となれば毒という可能性にも思考の幅を広げるでしょうが、確定させたくはなかった。

 

そのため美兎ちゃんは、この毒殺を複数人に行うことは避けたかった。複数人が同時に体調不良を訴えれば、毒やその近辺での食事を疑われる。さすがに個人的な不調とはならず外的な要因が確定するし、それがウィルスというのも耐性があるはずの生徒が同時に複数人となれば不自然になります。せっかく超遅効性の毒を利用しているのに、それが死に至らすまでの間は極力、毒という可能性に辿り着いてほしくなかったのです。ゆえに毒殺計画は、単体を狙う必要があった

 

 

 

 

最原くんの研究教室にあった毒は、基本的に経口摂取です。となればその毒は『食材』に混入するのがもっともバレにくい。当然『料理』ではだめです。そんなところ誰かに見られたら一貫の終わり。でも皆の前に並べられる前の『食材』ならこの限りではありません。当然美兎ちゃんもそれを狙ったのですが、しかし『食材』に入れるとなるとそれが唯一人の人間の腹におさまるかどうかが分からなかった。

 

 

 

 

2章の出だしです。斬美さんが食事を用意してくれました。それは「シェア」的な提供のされ方でした。そのため、そこに毒を入れてしまっては複数人に行き渡ってしまう。これでは毒殺が実行できません。

 

しかしこの食事の形体が徐々に変化していった。

 

 

 

 

そう、最終的に斬美さんは、全員分の食事を全員分のオーダーごとに同時に用意するというスーパー面倒くさい提供の仕方になったのです。ここが美兎ちゃんにとってのチャンスとなった。全員分の食事の中で、その料理にしか使わない食材が当然あったでしょう。それに毒を混入することにより、ただひとりだけに毒を盛ることが可能になった。だからこの段階で混入したのです。

 

実際何に、誰に向けて盛ったのかは不明です。しかし百田くんが、いない人の分までまとめて食ったその中に、毒食材もとい毒料理があったのでしょう。そのためその毒を百田くんが摂取することになってしまったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮に学級裁判となった際、最原くんたちはいつから百田くんの調子が悪かったのか、からクロの手口を追おうとするはずです。となれば遅効性にすれば相当前の百田くんの様子から答えを探らなければなりません。実際に2章の終盤からであるという答えに辿り着ける人はいないでしょう。となれば、仮に毒を盛ったその2章終盤あたりで美兎ちゃんの怪しい行動があったとしても、それと事件とを結びつけ辛くなる。それが狙いのひとつです。

 

 

百田くんが血を吐いたのをみんなが確認したのは4章です。4章の時点で最原くんの研究教室は開かれているので、仮に百田くんの死因を毒だと断定されたとしても、もうその毒は誰にでも利用可能となるので犯人を絞り込むことにはなりえません。これも狙いです。

 

 

実際は美兎ちゃんは2章時点で、ドローンを使って最原くんの研究教室から毒を拝借したのでしょう。犯行が2章あるいは3章時点で行われたと特定され、さらにそれが毒だと断定されると、美兎ちゃんは一気に犯人候補になってしまいます。その時点で最原くんの研究教室から毒を入手できたのは、美兎ちゃんかモノクマくらいしかいないからです。だからそれだけは美兎ちゃんは特定されたくなかったのです。

 

 

 

 

■TOP

≫次へ

≪前へ