このEPの内容の一番の特徴は、EP1の「第一の晩」から「第二の晩の秀吉殺し」までのストーリーをピックアップしたものである、ということです。EP5は、「事件10周年特集を組んだ雑誌」の内容を、EP1のメッセージボトルのストーリーに重ね合わせた物語であるため(そうしたのは縁寿です)、EP1の「秀吉殺し」までの回答編のような要素も含まれているようです。このEP5の解釈は、ちょっと一つに絞れなかったので、いくつか紹介します。
四つほど、解釈してみました。一つは王道。19年前の男(戦人)が犯人。19年前に、崖から落ちた使用人が明日夢の母親であるとの設定で、戦人は夏妃と右代宮家すべてに対し、祖母の復讐を遂げる目的で六軒島を訪れた、というストーリー。
夏妃が蔵臼を殺害するEP1の物語は、戦人が碑文を解くことによって、蔵臼との言い争いというか蔵臼の夏妃のプライドを傷つける会話がなくなるため、この時点でストップします(ただ、このタイミングは超微妙。戦人が碑文を解いたことを親たちに報告した時間と、蔵臼が殺害される時間のどっちが先かは、EP1を検証してもはっきり答えを出せませんでした。これが間に合わなかった場合のストーリーは、二つ目の解釈で記します)。
戦人は、夏妃を貶めるだけのために蔵臼を殺し、それが果たされ満足して、全員を巻き込んで自爆。戦人くんは犯人ではありませんよという赤字は、戦人は殺せと命令しただけ(おそらく紗音が殺した)と推測できます。
余談ですが、戦人が復讐の意思を持ってこの島にやってきたという設定であれば、朱志香との最初の電話のやり取りの中の不思議な間の部分も、「なんか、夏妃伯母さんが最近元気ないらしいって聞いたんだけど」「朱志香、何かあったのかよ?」というようなセリフが入ると仮定することで、自然な会話になります。
二つ目。その前にまず確認したいのは、EP5において爆死以外で死んだのは、「そしてとっくに殺されてるわ。あんたに電話で声を聞かせた直後にね」というベルンの発言から、蔵臼だけだと思われます。これはEP1の事実をそのまま反映させた形です。EP1でも、「第一の晩」と「第二の晩の秀吉殺し」までは蔵臼しか死んでいませんから。 要するに、EP1で蔵臼を殺したのは誰か、という謎をピックアップしたのがEP5である、と言い換えることができるかもしれません。
となるとEP5の赤き真実、右代宮夏妃は犯人ではない、もEP1を反映させた結果だと仮定できます。EP1で蔵臼を殺したのは、夏妃ではないとワルギリアは主張しているのです(このEPのワルギリアはおそらく幾子です※。雑誌を見ながら葛藤している十八に、アドバイスを送る形でサポートしようという試みでしょう)。EP1でも少し言及しましたが、やはり朱志香が殺したということでしょう。
この事実を「第一の晩」と「第二の晩の秀吉殺し」まで反映させた物語がEP5だとするならば、EP5の犯人は朱志香です。
しかしそうなると、EP5では朱志香が蔵臼を殺害するタイミングは限られてきます。
「屋敷以外の全員は、親族会議開始後、屋敷内にて何を行うことも不可能なり」
「24時の時点で、屋敷の2階廊下には、夏妃と蔵臼、源次がいたわ。残りは全員、親族会議の食堂よ。もちろん、この時点ではまだ殺人は起こってない。源次も健在よ」
この赤字を抜けなければならないからです。24時というのが一年前のことを言っているだけなのであれば、EP1と変わりなく解釈できます。1986年10月5日の24時のことを指しているとは限らない、という話です。そう解釈してもよさそうな記述もあります。ロノウェの「この法廷が開廷した時、ラムダデルタ卿は宣言しておりますよ。24時を迎えての答え合わせと!死亡宣告は二日目24時、即ち、ゲーム終了時点のものです」というセリフです。後半のセリフが青字になっています。赤字で言えない、つまり、死亡宣告は二日目24時ではない、と解釈できるのではないでしょうか。
そうなると話は簡単です。親族会議前にEP1のような争いが起こり、朱志香は蔵臼を殺してしまう。碑文はすでに解かれているため、紗音はEP1のように朱志香をかばう理由がありませんが、感情論として、朱志香をかばいたいし夏妃を許せないと思った紗音か戦人が(あるいは両方が)、魔女幻想を開始。夏妃のプライドをズタズタにすることに成功しますが、朱志香は死にたいとか言うし、結局じゃあみんなで死ぬか、という結論に至った戦人と紗音の意思で爆死。これが二つ目の解釈です。
しかし前記の赤字を二つとも信用するならば、もっと恐ろしい物語になります。
朱志香が蔵臼を殺すには、24時以降の屋敷外でしかありえません。しかもそれは、24時から1時の間か、翌朝7時以降です。その時間に蔵臼が屋敷にいないという事実は、どう推測しても朱志香の突発的殺人を説明できません。計画殺人しかありえないのです(かなり無理ある解釈として、戦人が碑文を解いたのは朱志香が碑文を解けなかったせいだ、とか何とか言って朱志香を襲ったところで、突発的に殺してしまった、くらいでしょうか。ちょっと考えづらいです)。つまり、動機があるということになります。それは何なのでしょう。伏線を集めてみましょう。
子を宿せない夏妃、病院でも原因不明。蔵臼を嫌悪している夏妃。金蔵と密会を重ねていたという証言。明らかな情交の痕跡の証言。食堂での座席の配置で、序列第5位の楼座の次が第6位の朱志香。
以上から、朱志香は金蔵と夏妃の子であるという可能性を推理できます。
子供ができない原因は、夏妃ではなく蔵臼にあった。だから夏妃の体を検査しても無意味だった。朱志香が第6位なのは、蔵臼の長女だからではなく、金蔵の三女だから(その不自然をなくすため、金蔵は、序列を配偶者の前に子供を持ってこざるをえなかった)。
その事実を知った朱志香は、右代宮家そのものを呪った。蔵臼を殺し、夏妃を貶める計画を立てる。さらに、碑文を解いた戦人から爆弾の存在を聞かされて、計画を実行する時が来たことを自覚。まずは他の子供たちに、夏妃と蔵臼に仕返しがしたいから計画に乗ってほしいと説得。戦人はそれを受諾。戦人は親たちや使用人たちに、計画に乗るよう次期当主として命令。朱志香は人知れず爆弾のスイッチをオン。使用してすべてを巻き込んでの自爆を決意。これが三つ目の解釈です。
四つ目。絵羽犯人説で説明可能です。
戦人が碑文を解き、それを親たちに報告したとき、絵羽は真っ先に金蔵の書斎に行きました。蔵臼は夏妃に電話した後、書斎の前で絵羽と取っ組み合いになりましたね。その際、絵羽は蔵臼を殺害してしまったのではないでしょうか。事象式で説明した、絵羽の行為です。絵羽と取っ組み合いはしたくないものですね。間違って殺す天才です。
また、蔵臼が電話の直後に死亡したとする赤字の正体も、この時間帯のことだとも解釈可能なのではないでしょうか。
絵羽はとりあえず蔵臼の死体を隠しました。その間に静かになったからでしょう、夏妃は書斎を脱出。誰もいないことを不思議に思いつつも、みんなと合流して黄金部屋へと行ったという流れだと思います。夏妃は最後まで、蔵臼の死の真相を知らなかったと思われます。
黄金部屋に蔵臼はいなかったのです。しかし戦人はおろか、エリカもその場に居合わせ、蔵臼を目撃しています。が、このEPではエリカの視界に紗音と嘉音が同時に居合わせていることもあります。このことは、エリカが、そこにいると認識していない人でも、いるかのように描写することがOKであることを表しています。エリカがその人物と会話をしなければいいわけですね。
また、黄金部屋に集まった時点で蔵臼がすでに亡き者である、とする伏線がもう一つあります。24時頃2階廊下で、蔵臼と夏妃が会話するシーンです。この時の蔵臼は、とてもやさしく、頼もしい言葉を夏妃に与えています。これは、EP1の金蔵と夏妃の会話と一緒なのです。夏妃によって美化された、夏妃の理想の蔵臼を描写したにすぎないのです。このことから、やはりこれ以前に蔵臼が死亡していると推理することが可能になると考えられます。夏妃は蔵臼に、本当はこういう風に言ってほしかったのでしょうね。わかるわかる。
その後どうなったか。まず、戦人が蔵臼の死について知ったのでしょう。源次あたりに教えてもらったのでしょうか。戦人はベアトリーチェも認める次期当主ですから、知る権利があると判断したのかもしれません。戦人は、夏妃に祖母の復讐をするために六軒島に来たわけですから、この事実を利用しようとしたのではないでしょうか。
夏妃を追い詰めるために、魔女幻想を開始。夏妃以外の全員を、次期当主の命令として演技に協力することを要請したのです。そしてその結果、夏妃に19年前のことを自供させることに成功します(まあ戦人は、その自供を許せるものとしては受け取らなかったようですが)。
最後の爆発が誰の仕業なのかは、不明です。
※ワルギリアとは、熊沢だけを表すものではありません。ワルギリアとは、ベアトリーチェのもとへ導く者を表すものです。その役割を、現実のストーリーの流れの中で担う人物が表されることもあるということです。EP7冒頭では、縁寿がワルギリアとして登場しているようです。
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