第2の事件、美樹本(温水)が殺された事件を振り返ります。かまに仕掛けが施されてあってそれにより殺されたとなっていますが、その仕掛けは自動ではなく手動です。オーナー夫妻に、それを作動させる時間はあったのか。
細かいことですが、違和感のある発言としては、「あの仕掛けを作動させることができたのは、オーナーと透(藤原竜也)と俊夫(小橋)だけだ」という意見に、「オーナーと透はずっと一緒だったがお互いそんなことをする様子はなかった」という反論がなかったことです。
つまり、お互いにずっと一緒にいたわけではなく、バラバラに行動する時間がありえたことを暗に示しているのではないでしょうか。
そうであれば、オーナーは単独で仕掛けを作動させることが可能です。
ただし、美樹本が殺され悲鳴を上げた瞬間、オーナーと透は一緒にいました。仕掛けが手動である以上、アリバイとしては完璧です。
その悲鳴のシーンが、本当に美樹本が殺された瞬間のシーンであれば。
俊夫の証言を振り返ってみましょう。美樹本が殺されたときにどこにいたのかと問われ、「トイレに行くと言われたから別れたが、戻ってきたら死んでた」と発言しています。
美樹本は俊夫と別れた直後に殺されていますから、俊夫は悲鳴を聞いていてしかるべきなのに、そのことを証言していません。これは美樹本の悲鳴が、嵐のせいで近くにいたはずの俊夫にすら届かないものだったことを示しています。となれば、透が聞いた悲鳴は勘違いだったという推理もまったく不自然ではなくなります。
悲鳴が勘違いである以上、美樹本が殺されたのは透が悲鳴が聞こえたと思った時ではなかったとしても、なんら不自然ではありません。ドラマの演出上では、まるで美樹本が殺された瞬間オーナーと透が一緒にいたかのような編集になっていますが、カット割りに挟まれる悲鳴が同時間を示すものになりえない以上、オーナーと透が一緒にいたあのときは、もう美樹本を殺し終えたあとだったと推理することも可能なのです。
さらに、美樹本を殺したのがオーナーだったとすれば、美樹本が瀕死の状態で透の部屋を訪れた理由も、もはや明白です。犯人であるオーナーに助けは求められない。2階に上がってオーナー以外のだれかに助けてほしかったからだと、自然な推理になるわけです。
美樹本を殺した動機として、すでに皆殺しプランに移行していたからと考えられるのもありますが、一番はカメラの存在の危険性を考えたのではないでしょうか。田中一郎殺しのときにバッチリと自分が凶器を持っているシーンを撮られていたことからも、美樹本を最初に排除しておこうと考えたものと思われます。
そして当初殺すつもりのない田中一郎と美樹本を殺してしまった以上、もうあとには引けなくなったオーナー夫妻は、皆殺しの方へと計画のかじを切ることにしたのでしょう。となると、自分たちは人間関係的に無関係だからという理由で容疑者から外れようとしていた当初の計画とはちがい、自分たちが犯人ではないとするもっと強い理由が必要になってしまいました。
そのために、透の部屋にわざと犯行予告を残さずに、彼が犯人だからという理由で自分たちは逃げ果せるというふうに思い至ったのでしょう。
その予定とは違う形にはなりましたが、最後の話し合いの際に透が犯人だという総論で場を占めることに成功し、これでいよいよ皆殺しを実行できる状況が整ったと思ったのでしょう。そして実行に移したのです。
しかしオーナー夫妻も、結局は誰かに殺されてしまいました。どういうことなのかといえば、誰かに返り討ちに遭ったとするのが一番自然な推理だと思います。それがオーナーの「私たちが間違っていた」という最期のセリフに現れているんじゃないでしょうか。
オーナーの奥さんは、刃物で首を切られて死んでいました。オーナーの死因は不明ですが、やはり同じだと考えるのが普通です。
このとき凶器の刃物を所持しているのは約2名います。香山さんの奥さんと啓子ちゃんです。
物語の展開的に、もっとも自然なのは啓子ちゃんによる犯行だとするのが一番自然ではないでしょうか。もともとオーナー夫妻は啓子ちゃんを殺したかったわけですから、啓子ちゃんを殺しにいったことは間違いないはずです。にもかかわらず、啓子ちゃんは最後まで無事でした。これはつまり啓子ちゃんはオーナー夫妻を返り討ちにしたからだと説明できるのではないでしょうか。
オーナーの「私たちが間違っていた」というセリフも、啓子ちゃんをカンタンに殺せると思っていた私たち夫婦は間違っていた、あるいは啓子ちゃんがウサギをキズつけた行為も誤ってやったことではなく、それをやれるポテンシャルを有していたことに対して認識不足だった、平然と他者を殺害できる本性を隠していたことに気づけなかった私たち夫婦は間違いだった、などと読み解くこともできますよね。
この啓子ちゃんの本性が、血を多く見過ぎたことによって開放され、オーナーのウサギをキズつけたあの頃に戻ったかのように振る舞いだしたことを表しているのが、田中一郎の死体を処分する行動に表れているのではないでしょうか。
あれが啓子ちゃんの本性だった。おそらく酒○薔○聖○のような過去を彼女は持っていたのでしょう。その過去の行いの一つにウサギ事件があったのでしょうね。過去のサイコパスな自分に戻ることを恐れていた彼女は、それを思い出させるウサギという存在が苦手だった。その過去をずっと封印して生きてきたが、今宵開放されてしまうに至り、オーナーの襲撃を反撃している内に、その他の人間も殺していったとするのが真相なのではないでしょうか。
それを目撃していた俊夫は、啓子ちゃんを指して「あの女がみんなを殺したんだ」と発言したのではないでしょうか。
予告文にあった「つぐなえ」という部分にも意味があったということが、これで説明できますね。
あとちなみに、香山さんの奥さんが死んだ経緯については正直わかりませんでした。手がかりは一応あるんです。首に突き立てられたナイフは自分が使っていたものだし、左側に刺さっていたことから自殺はありえません(香山さんの奥さんは右利きです)。イスに座ったまま殺されていますから、凶器を持ったまま入室したとは考えづらく、また、刃物を持っている人物が殺害したのであればそれで殺せばいいのに、わざわざ相手の所持品で殺していることからも、一体どういう経緯でそうなったのかがまったく想像できませんでした。
(28'04'24 追記)
香山さんの奥さんの死の真相について、ドラマを見返したら分かったので追記します。ただ、だから何?という類の話で、本筋になんの影響も出ませんでしたけど。
手掛かりは、奥さんではなく香山さん(北村総一郎)にありました。
彼が死んだとされる一度目の描写と、透が発見した香山さんの死体の描写は、実は微妙に異なります。
左手の位置、浴衣のはだけ具合、血の量。
最初は、撮影上のミス(つまり、北村さんが同じポーズをとれなかっただけ)かとも思いましたが、他の二つはともかく、血の量だけはミスではありえません。
透が発見した時の血の量は、最初の描写よりも増しています。美術さんが明らかにベッドなどにプラスしているのです。つまり、そこにスタッフのなんらかの意図があることになります。時間経過を表現したかったからだ、と言われてしまえばそれまでなのですが、他の差異とも総合的に判断して、香山さんは一度目と二度目の間に体を動かしたと推理してもいいのではないかと、私は思いました。
香山さんは、最初の奥さんの襲撃では死ななかったのです。そして、再び意識を取り戻し、とどめを刺そうと襲ってきた奥さんを、逆に返り討ちにした。これで、香山さんの奥さんが自分のナイフで死んでいたことにも説明がつきます。
で、香山さんはというと、その後啓子ちゃんに殺されたってことなんでしょうね。それで香山さんは、また自分の定位置に戻った(笑)ということなのではと思いました。
…だから何?
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