C103と沙都子

 

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入江が開発した、C103 を見ていきましょう。C103 の特徴は、雛見沢症候群のL5の発症まで至ってしまった沙都子を、L3の状況まで戻し、日常生活に支障がない程度に回復させることができた薬です。

 

雛見沢症候群の病原体であるプリオン病は、現代においても不治の病です。治療法は存在しませんし、一旦発症してしまったら症状が改善されることはありません。では入江は、その病気の治療薬の開発に成功したということなのでしょうか?努力と精神力で奇跡が起きたということなのでしょうか?

 

 

雛見沢症候群とひぐらしの異常事件との相関図は、前のレポートで示していただきました。雛見沢症候群に感染していると思われる患者のその実は、雛見沢症候群の病原体に感染しているとは限らないということです。結局沙都子の解剖は行われなかったのですから、入江たちは沙都子からは病原体の存在を確認していないことになります。

 

 

 

ということでこの事案は、沙都子は雛見沢症候群に罹患していたわけではなかったと考えれば解釈がスムーズになります。単に、雛見沢症候群と類似する症状を発症していたために、当然のように入江たちの誤診を受けてしまったんですね。

 

沙都子は精密検査によってL5の認定を受けます。この検査がどのようなものであれ、それが病理検査であったはずはありません。病理検査で雛見沢症候群を、プリオン病を判別できるほどの技術がすでに存在するならば、1%の危険を犯してまで梨花の脳を覗くなんて無茶な検査をしなくても、そこから採取して研究を進めればいいわけですし、このあたりの説明は前レポートで示されたとおりです。

 

つまり雛見沢症候群の精密検査とは、沙都子の体が雛見沢症候群っぽい状態にあることが観察したら伺えた、というものです。脳波とか、神経化学物質とかを調べるのでしょうね。

 

 

統合失調症の病因

(抜粋)

ドパミンなどの神経化学物質が統合失調症の病因として関連するという説は長い間研究者をひきつけてきたのですが、この説には問題点もいくつかあります。ほとんどの研究は死後脳の標本を用いて行われていますが、死後、神経化学物質がどの程度変化したかを知ることはしばしば困難です。また、抗精神病薬が多くの神経化学物質に影響を及ぼすことも知られており、以前なされた多くの有望な発見が、その後単に薬の影響にすぎなかったことが示されています。

 

 

脳波などの状態は解析できても、それの原因がなんなのかは研究者でも分からないものなのですね。入江たちは、その原因が雛見沢症候群の病原体が引き起こしていると思っているのであって、そうでなかったとしても不思議ではありません。

 

 

雛見沢症候群抜きで沙都子の状態を診断したならば、その病名は「統合失調症」となるのでしょう。そして、統合失調症の治療薬といえば、「抗精神病薬」になります。C103 は新薬だそうなので、80年頃に開発された抗精神病薬を調べてみました。

 

 

 

痛みと鎮痛の基礎知識

(抜粋)

チミペロン timiperone(トロペロン®)

ハロペリドールを元に日本で開発されたブチロフェノン系の旧来の抗精神病薬

1973年に第一製薬株式会社(現 第一三共株式会社)研究所において創製された国産初のブチロフェノン系抗精神病薬で、1976年から臨床試験を開始し、1983年に「統合失調症《の効能・効果で承認を得て、1984年に発売した。

 

 

これかなと思いました。これの元になった「ハロペリドール」は昔からある薬ですが、ドパミンには作用しますがセロトニンに作用する薬ではありませんでした。それだと、統合失調症の陽性症状は緩和できますが、陰性症状には効果がないそうです。

 

 

痛みと鎮痛の基礎知識

(抜粋)

<陽性症状>

幻覚(幻聴、幻視など)、妄想、思考の障害(洞察力の欠如、支離滅裂な言語など)、強いイライラ、激しい興奮

<陰性症状>

感情の平板化、興味の喪失、引きこもり、意欲の低下、身だしなみ、衛生面にかまわない、食事に無関心、気分の落ち込み

 

 

陰性症状とは、沙都子が叔父叔母と暮らすとなる症状みたいなカンジですね。これにも作用する薬でなければ、叔母との生活は2年ももたないでしょう。最初の方は沙都子も叔母に反発していたそうなので、陰性症状は出ていなかったみたいです。

 

この陰性症状にも若干ながら効果の期待できる新薬が「チミペロン」です。入江はこれを開発したのではないでしょうか。以下は、その特徴と、入江の認識をなぞっていきます。

 

 

梨花「…入江は、ボクの体を調べて、たくさんのことがわかったのではないですか?」

入江「えぇ、それはもちろんです。……症状を抑える効果が期待される試薬も現在、色々と試しているところです」

梨花「…それを沙都子に与えることはできませんのですか?」

入江「非常に危険な賭けです。…最悪の場合、彼女は即座に末期発症し錯乱するか、さもなければ人としての心を失い、一生を焦点の合わない目で壁を見て過ごす体になってしまうかもしれない」

 

 

 

ハロペリドールの効果・副作用・体験談

(抜粋)

神経遮断薬悪性症候群は、ハロペリドールによって引き起こされる命にかかわる可能性のある症候群です。症状には発熱、筋肉の硬直、精神錯乱、異常な思考、頻脈または不整脈、発汗などがあります。このような症状がある場合は、すぐに医師に相談してください。

  

 

 

ハロペリドールは、その副作用の中に、入江が危惧する症状を含んでいるようです。ハロペリドールを元につくられたチミペロンも、もちろんそのような症状が危惧されるでしょう。また、この悪性症候群の中には「意識障害」も含んでいます。一生を焦点の合わない目で云々は、この意識障害のことですね。これが引き起こされる可能性がある薬が、抗精神病薬です。

 

そして、C103 を投与した結果、沙都子のL5の状況が改善されました。このひぐらし語を日本語に訳すと、統合失調症の患者に実験中の新薬である抗精神病薬を投与したら改善がみられた、と翻訳できるかと思います。

 

鷹野「しかし、C103を日に3回も注射する義務と、毎週日曜日に検査に訪れる義務を、彼女にどう説明されるおつもりで?」

 

 

抗精神病薬の効果・副作用について

(抜粋)

抗精神病薬には、2つの目的の注射剤が発売されています。

即効性を期待した注射剤

持続的な効果を期待した注射剤

即効性を期待したお薬としては、セレネース・ヒルナミン・コントミン・ジプレキサなどが使われます。入院治療の場で活躍するお薬です。

 

 

 

抗精神病薬の注射はいくつかありますが、それはほとんどが持続的な効果を期待した、持続性注射剤です。1回打てば何日も効果が継続されるからこそ意味があるのであって、毎日打つことはありません。となれば、即効性を期待した注射剤ということになるのでしょう。その代表がセレネース(ハロペリドール)です。

 

 

くすりのしおり

(抜粋)

商品名:ハロペリドール注5mg「ヨシトミ」

用法・用量(この薬の使い方)

通常、1日1〜2回、静脈内または筋肉内に注射します。

 

 

セレネースの半減期と作用時間とは?

(抜粋)

セレネースは半減期が長く、1日1回の服用でも効果は持続します。ですが、ドパミン遮断作用による副作用が強くなってしまうため、1日2~3回にわけて服用することが多いです。

 

 

 

後者は服用時の説明となりますが、注射も同じじゃないかなと。副作用を警戒すれば、3回に分けて注射することもあるのかなと。同じくチミペロンにも注射剤があります。ただ気になるのは、抗精神病薬には注射剤ではなく錠剤もあることです。毎日3回の注射って、半端じゃない苦痛です。錠剤にしなかったのはなぜなんだろう?

注射と服薬の違いは大きく2点で、「早く効く」「胃腸で吸収されないので少量で効果が大きい」です。この効果が大きいって部分を入江は重視したのでしょうか。

 

注射にしなければならない可能性として考えられるのは、あとは糖尿病の「インスリン」ぐらいしかないかなとも思います。

 

 

「1型糖尿病」って知ってる?

(抜粋)

子供から成人までの間に発症することが多く、10万人に1人の発症率だと言われている1型糖尿病。いまだ原因不明で、膵臓のβ細胞が壊れてしまい、まったくインスリンが分泌されなくなってしまう病気です。今の医学では治ることがないといわれていて、インスリンを体外から補給しないと生命に関わるため、患者はインスリン注射を欠かしてはなりません。

 

糖尿病とこころ

(抜粋)

糖尿病患者はうつ病になりやすく、またうつ病患者も糖尿病になりやすいといわれています。

 

痛みと鎮痛の基礎知識

(抜粋)

<抗精神病薬の代表的副作用>

内分泌・代謝関連症状

高プロラクチン血症---月経異常、乳汁分泌、性欲の異常、性機能障害

体重増加、糖尿病・高脂血症

 

 

 

抗精神病薬の副作用の中に糖尿病がありますし、1型糖尿病の場合は原因不明の病気です。また、鬱との関連性もあるのが糖尿病ですので、初診時に沙都子はすでに糖尿病とうつ病の合併症も患っていたのかもしれません。インスリンこそ注射しかだめみたいですので、沙都子に処方されたのはこちらの可能性の方が高いのかな?

 

もっとも可能性が高いのが、このふたつの合わせ技だろうか。初診時に処方したのはチミペロン。注射剤で大きい効果と副作用の少なさを考慮して、日に3回の注射を義務付けた。そして、徐々に服薬に切り替えていこうとしていた矢先、1型糖尿病が発覚した。仕方なくインスリンを処方。つまり、80年の段階で注射していたのはチミペロンで、83年(皆殺し編)で注射していたのはインスリン。これが一番整合性がとれるのかな。 

 

 

梨花「……レベル3は永遠に治らないのですか」

入江「仮に異物が完全に取り除かれても、人体側に過剰な反応を示す体質が作られてしまいます。つまり、」

梨花「……沙都子は完治しても、一生、レベル3から治らない」

入江「………………そういうことになります

入江「…ですが、そう悲観することはありません。規則正しい生活習慣とセルフコントロール。そしてある種の投薬を続けることによって、症状の発生を抑えることができます」

梨花「一生、……治らない」

入江「……言葉を悪く言えばそうなります。ですが、世の中には難病ではあってもうまく病気と付き合っていけるケースも少なくありません」

入江「病気そのものは生涯治りませんが、その発症は抑えることができます」

 

 

やはり、どっちともとれるんですよね。統合失調症であれば、一度脳が覚えてしまった病的な症状が、なにかの際にぶり返す可能性はずっと残る。1型糖尿病は不治の病であり、高血糖になればうつを再発しやすくなる。

 

 

 

 

 

 

沙都子が糖尿病であるということの示唆は、実は物語中にいくつかあったりします。まず一つ目が、ブロッコリーとカリフラワーの区別ができない事案です。ふつうは「違いを覚えられないおバカさん」という解釈になるのでしょうが、「違いを認識できない」でもおかしくないわけですね。

 

つまり色盲です。ブロッコリーとカリフラワーの色の違いが知覚しづらいタイプの色盲だったのではないでしょうか。

 

 

色覚異常

(抜粋)

後天性色覚異常

後天性色覚異常では、程度の差はあれ必ず青黄異常と赤緑異常が混在します。網膜疾患では青錐体系の障害が特に著明で、明らかな後天青黄異常を示す疾患には、糖尿病性網膜症・網膜剥離・中心性漿液性網脈絡膜症・網膜色素変性症などがあげられます。

 

 

この「糖尿病性網膜症」のことです。

 

 

糖尿病患者の色覚異常について

(抜粋)

今 回,糖 尿病 患者 の色覚 異 常 は, 全 て青黄 色覚異 常 で あった こ とに よ り,糖 尿病 性網 膜症 及 び視神経 障害 と関連 す る こ とが示唆 された. 色覚異常は,糖 尿病性合併症の一つ として注 目す る必要があると考えた.

 

 

糖尿病と色覚異常には関連性がある。これも沙都子は糖尿病性合併症として患っていたのではないかなと思っています。

 

二つ目は、祟殺し編の沙都子のホームラン事案です。山遊びが好きなだけの小学生(?)の女の子がホームランを打てるというのはどうなんでしょうね。まあこれを言い出したら、名探偵コナンとかは見れたもんじゃないですが。しかしそれでも、下記の引用を引き合いに出すことで、一定の説明が可能になることも事実です。

 

 

テストステロン,補充療法,効果,LOH症候群,男性更年期障害

(抜粋)

最近、高齢男性の多くの疾患においてテストステロンが低下しており、その補充により改善する事が報告されています。 もちろん、最も期待されるのは性機能を含む男性更年期症状ですが、そのほかにも糖尿病をはじめとするメタボリック・シンドローム骨粗鬆症肥満や体組成の改善虚弱抑うつ等にも効果が期待されます。

 

テストステロン,糖尿病

(抜粋) 

「テストステロン」には血糖値を調整する抗糖尿病効果があった

 

テストステロン - Wikipedia

(抜粋)

テストステロン(testosterone)は、アンドロゲンに属するステロイドホルモンで、男性ホルモンの一種。筋肉増大。

 

 

スポーツ選手のドーピングなどで有名な「アナボリックステロイド」、いわば筋肉増強剤の仲間に「テストステロン」というのがあるそうです。これが、血糖値を抑えるインスリンの低下を抑える効果、つまり糖尿病に効く薬っぽいです。これも沙都子は摂取していたのではないでしょうか。

だからホームランも打てる、糖尿病の治療中だから、こういう解釈も可能なのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛みと鎮痛の基礎知識

(抜粋)

クロザピン Clozapine(クロザリル®)

1975年、フィンランドで発売6ヵ月後で8人の死亡を含む、16人の無顆粒球症 agranulocytosisの発現が報告されたため、各国で販売中止や開発中止の措置がとられた。わが国も臨床試験が終わった段階で申請を取り下げた。ヨーロッパの一部を除いて他の国々でも開発が頓挫してしまった。

クロザピンは、深刻な副作用として顆粒球減少症を起こすので、投与中は毎週1回の血液検査を必要とするため、アメリカ、英国、オーストラリア等の国々では医療機関で行う血液検査結果などをクロザピン患者モニタリングサービスセンターに報告することが義務付けられています。

 

 

 

また、ハロペリドールのような「定型抗精神病薬」の次世代みたいなやつで「非定型抗精神病薬」があります。近年の開発はこちらが中心だそうなのですが、元々は昔から研究されていて、一度死亡事故を受けて研究が中止されたようです。

その死亡事故の原因である顆粒球減少症は、研究段階ではきっとどの抗精神病薬にも危惧されるんじゃないでしょうか。それが起きていないかは週一で血液検査が必要になる。入江たちが沙都子に課した週一の検査とは、この病気になっていないか調べるための血液検査だったのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽性反応が出た場合、治療薬C自動注射器を使用すること。

注射後10分を経過しても痒みが引かない場合には2本目を使用する。

それでも改善が見られない場合には本部にて治療を受けること。

また、Cは健常な人体には悪影響を及ぼすため、陽性反応を確認しない使用はこれを厳禁とする。

健常な人体に使用した場合、10分以内に全身の発疹、発熱、瞳孔の拡大、妄想を引き起こす。これらを自覚した場合、本部にて治療を受けること。

 

最後は、この治療薬C(C120)について。これに一番近いのは下記かと思われます。

 

 

痛みと鎮痛の基礎知識

(抜粋)

フルマゼニル flumazenil(アネキセート®)

ベンゾジアゼピン受容体にベンゾジアゼピン系薬剤と競合的に結合することにより、ベンゾジアゼピン系薬剤の作用発現を阻害する。

ベンゾジアゼピン系薬剤による鎮静の解除と呼吸抑制の改善薬

ジアゼパムやミダゾラムの薬理作用を抑制する。

短時間作用型:拮抗薬の方が早く体内から排出しベンゾジアゼピンの効果が再出現する可能性があるので、投与後2時間ほどの経過観察が必要 

 

くすりのしおり

(抜粋)

商品名:フルマゼニル静注液0.5mg「ケミファ」

この薬を使ったあと気をつけていただくこと(副作用)

主な副作用として、頭痛、興奮、不穏、幻覚、不安感、体動、痙攣、頻脈、徐脈、咳、咽頭異和感、吐き気、嘔吐、胸部不快感、羞明(まぶしい)、過換気(呼吸回数の増加、呼吸が深くなる、不安)などが報告されています。

このような場合には、使用をやめて、すぐに医師の診療を受けてください。

呼吸困難、蕁麻疹、顔面が蒼白になる、冷汗、立ちくらみ[ショック、アナフィラキシー]

 

フルマゼニル ー Wikipedia

(抜粋)

1987年にロッシュが開発した。

通常経静脈投与の単回投与(0.2mg)として使用される。フルマゼニルの拮抗効果は通常投与2分以内に発現する。効果不十分の場合は、1mgまでの増量(ICUなどの管理が行き届いた環境なら2mgまで)が可能である。

 

 

ざっくりいえば、「ジアゼパム」などの薬効を無効化する薬です。ジアゼパムの薬効も様々あるのですが、これは後述することになりますが、このベンゾジアゼピン系の薬の症状の中には、錯乱して暴れる系の「雛見沢症候群の末期発症的な症状」が見られます。

 

 

 

ジアゼパム ー Wikipedia

(抜粋)

ジアゼパムによる有害事象としては、前向性健忘(特に高用量で)と鎮静、同時に、激昂やてんかん患者における発作の悪化といった奇異反応が挙げられる。

 

 

麻薬、覚せい剤と大差ない反応がありうるのですね。この症状を無効化するのに期待できる薬として、人類史においての87年に開発されたのが「フルマゼニル」です。これを入江は83年に、「雛見沢症候群の発症者に使えるかもしれない」という目的で開発に成功したのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

あと、ついでに「予防薬」についても。

 

病原体は基本的に空気感染で経皮からも感染する。

事実上、感染は不可避であり予防薬の投与を必須とする。

特に注意を要するのは高度感染者(住民)との接触である。

通常接触では問題ないが、粘膜・体液の接触で予防薬の投与に拘らず重度感染する。

 

予防薬の投与をしても感染が事実上不可避ならば、それ、予防薬になりませんよね。つまり、「感染」の予防薬ではなく「発症」の予防薬であることがわかるかと思います。

 

発症の予防薬であるならば、つまり興奮や錯乱を抑える薬であればいいわけですから、精神安定剤的な薬であればなんであっても説明できそうです。それの83年頃における新薬なのでしょう。ちなみに、プリオン病の予防薬は現代においても存在しません。

 

また、空気感染するのに通常接触では問題ないとする、わけのわからない所見については、感染経路が同定されていないことを示しているのでしょう。

 

 

感染予防

(抜粋)

プリオン病は異常型プリオン蛋白により伝達するが,基本的には空気感染・飛沫感染・接触感染はしません.中枢神経系の組織や臓器を扱わない限り,感染はしないので日常生活で感染することはまず考えられません.診療では中枢神経系の検査(腰椎穿刺)のみ感染する可能性があるため,その検体の処理には注意を要します.剖検は乾式で行い,解剖時の血液・体液は紙などに吸着させて焼却することが必須です.また,脳組織は蟻酸処理が必要でこれにより,初めて感染性は無視できるまで低下します.

 

 

 

空気感染・飛沫感染・接触感染はまず考えられないというのがプリオン病の研究で明らかになっていることです。しかしながら、血液や体液などの扱いには慎重にならないと感染性が無視できません。これが、「通常接触では問題ないが重度接触はだめ」という報告につながるのでしょう。

 

また、異常プリオンタンパクは極小の病原体で、それが本来脳などにある通常プリオンタンパクと接触し、異常型に変えてしまうことで感染拡大するという性質をもっています。異常プリオンタンパクが体内に入ってしまえば、通常プリオンタンパクとの接触の危険性が高まり、感染することがあると考えられています。体内に入るのに容易すぎるほど小さい病原体なのですから、経皮(例えば傷口)からももちろん吸収されるでしょう。

 

前レポートで示したとおり、雛見沢症候群の感染者は住民全土に渡っているという認識が入江たちの前提なのですから、住民全員がこの経路から感染したと考えているのでしょう。雛見沢村のどの場所(あるいは人)から異常プリオンタンパクが大量に発生しているのかは判明していないわけですが、それはこの村のどこかの空気(あるいは摂取物)に含まれているとしか考えられないと思っているのでしょうね。ですから空気感染するという認識を報告しているわけです。

 

研究結果と雛見沢村の現状との説明を合わせると、「空気感染するけど通常接触では問題ない」というわけわからん報告になるんですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみになんですが、雛見沢症候群(vCJD)の真の感染ルートは、下記かなと思われます。

 

綿流し編

魅音「宗平は中国大陸に出兵し、ハルピンで食料倉庫の管理をしていたと言い、撤退時に上官や仲間たちと共謀して、軍の缶詰をごっそりと盗み出していたのでした。……それを瀬戸内海某所に隠し、闇市で高値で売りさばいて大きな富を得たのです。

(略)

祖父、園崎宗平の上官だったと名乗る男が告白したのです。…あの缶詰は人肉の缶詰だったと。」

 

30年以上前、闇市にバラ撒いたとされる人肉の缶詰。闇市に訪れる大半は、今日食うに困っている貧困層。多分なんですけど、現場監督殺害犯はこの貧困層だったんじゃなかなと思います。当時は10才前後でしょうか。そのときに、この人肉缶詰を摂取したことがあった。

 

 

No.159 日本における人肉食

(抜粋)

▼クールー病と狂牛病

クールー病の症状は、かつて問題になった狂牛病(牛海綿状脳症)に極めてよく似ていると言われる。
狂牛病ウイルス(BSE)に感染した牛の肉を人間が食べると、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病になる。狂牛病の発生要因は、牛の骨や牛肉を粉にしたものを飼料に加え、それを牛に食べさせたことにある。つまり牛に牛を食べさせたわけである。
牛が牛を食べれば狂牛病、人間が人間を食べればクールー病と、同種族で共食いをした代償は、脳の機能障害から死という点で共通している。

 

■脳を食べることで感染する「クールー病」

(抜粋)

そして驚くべきことに、死者を弔う儀式の一環で遺体を食べるという風習が1960年代まであったのがパプアニューギニアの「フォレ族」だ。遺体の肉や内臓だけでなく、脳も食べていたというフォレ族だが、この慣習がまさにパプアニューギニアの風土病であるクールー病(Kuru)の元凶であると以前から科学者らに指摘されている。クールー病は脳などに存在する異常プリオンが感染することで引き起こされ、伝達性海綿状脳症やクロイツフェルト・ヤコブ病と類似した症状であると考えられている。

 

 

食人を習慣としていた部族の蔓延していた風土病「クールー病」は、同じくプリオン病です。人肉缶詰の中に異常プリオンタンパク質が含まれていた。そのため、それを食べた人の中から感染する者が出てしまった。そのうちの一人が、現場監督殺害犯だったのではないかなと思います。

 

…だが、人肉であることを知る彼らは誰も食さなかった。それらの缶詰は代用肉と称され、間違って自分たちが口にすることがないよう、底にマル代と刻印した…。

 

缶詰が人肉だと知っていた園崎宗平。当然、自分の親族にもそれを食べることがないように気をつけていたでしょう。詩音が葛西におどされて缶詰が苦手になったというのも、宗平の身内を守るための家訓が続いていることを示しているのでしょう。

 

 

ということで、園崎家の面々はこの人肉缶詰を摂取したことはないと思われます。イコール、魅音も詩音も、雛見沢症候群に感染なんてしていないってことになりますね。

 

 

重要なことなのでもう一度記しますが、入江たちが雛見沢症候群の病原体を発見したことが明らかなのは、現場監督殺害犯と梨花ちゃんだけです。それ以外の人については、入江たちは病原体を検出していないにもかかわらず、感染しているはずだと思い込んでいるだけです。

 

現場監督殺害犯から検出した病原体は「vCJD」。これは獲得性(外部から体内に取り入れることで感染する性質)ですので、感染ルートの推定として人肉缶詰であることに矛盾はありません。そしてこれは遺伝性(病気が子に受け継がれてしまう性質)ではありませんので、感染した人と重度接触したことがなければ、感染が受け継がれる心配はありません。

 

富裕層であった前原家も(30年前は知りませんが)、これに当てはまりそうです。圭一もまた、雛見沢症候群に感染なんてしていないことが分かるかと思います。

 

 

 

 

古手梨花から検出した病原体は「FFI」。これは遺伝性ですので、親子代々に渡って感染が引き継がれてしまうものではあるものの、やはり彼女らと重度接触しなければ、周りに感染を広めることはありません。

 

梨花ママは感染しているでしょう。というか、梨花が保有しているのはママから受け継がれたものでしょう。でも多分梨花パパは感染していないと思います。

 

 

この「FFI」も、上記の「クールー病」の名残かと思われます。明治初期まで続いていたらしい雛見沢の「人を食う伝統」により、その伝統の中心にいたオヤシロさま直系である古手家は、代々この「FFI」を遺伝していったのだろうと考えられます。ですので、昭和58年時点、「FFI」の感染者は古手梨花一人でしょう。

 

 

 

 

 

雛見沢症候群(vCJD)の感染ルートは人肉の缶詰で、それを食べたことがない人は感染していない。雛見沢症候群の親分である女王(FFI)は、感染を周りに伝播するタイプの病気ではないので、その周りのだれも感染していない。

 

これが、雛見沢症候群の感染状況の分布図なのです。

 

 

 

 

 

 

 

ーひぐらし大学医学部伝染病研究学科資料(了)

 

 

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