H173

 

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鷹野が富竹に注射した、H173の正体を明らかにすることからはじめましょう。それはもうこれしかないと思っています。

 

トリアゾラム「ハルシオン」です。

 

 

トリアゾラム - Wikipedia

(抜粋)

医学文献では、トリアゾラムは他のベンゾジアゼピン系と比較して、精神的・暴力反応などといった異常事象の発生が顕著にみられると報告されている。

またアルコールとの併用も作用増強のおそれがある。

また、大量服用により、呼吸抑制を起こすことがある。 

多くの患者は、10日間服用しただけでも不安・悩み・視野の欠落・パニック経験・抑うつ・非現実感・妄想を経験する。

トリアゾラムおよびニトラゼパムの突然の断薬後、患者には幻聴・視覚認知障害などの精神病を起こすことが報告されている。

 

ベンゾジアゼピン離脱症候群 - Wikipedia

(抜粋)

ベンゾジアゼピン系薬の服用により身体的依存が形成されてから、用量を減量するか、断薬することによって生じる一連の離脱症状。その症状は頻繁に深刻な睡眠障害、易刺激性、不安と緊張の増加、パニック発作、手の震え、発汗、集中困難、混乱と認識困難、記憶の問題、吐き気やむかつき、体重減少、動悸、頭痛、筋肉の痛みと凝り、多くの知覚変化、幻覚、てんかん発作、精神病[1]、インフルエンザ様症状[2]、また自殺[3]といった特徴がある

重篤な症例では、離脱反応は躁病、統合失調症、発作性疾患(特に高用量)のような、精神医学的なまた医学的に重篤な状態に似ていることがある

症状の重症度は、重篤なものになりえ、特に長期的な使用や高用量からの離脱、突然あるいは急速すぎる減量では、発作のような致命的なものになる。しかし徐々の減量や、また比較的低用量・短期的な使用からであっても(動物実験では1回の大量投与の後でも)重篤な離脱反応が起きることもある。

 

 

これはベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。超短期型と呼ばれるこの睡眠薬は、その効果がとても短く、それでいて強力です。それが牙を剥き、首をかきむしらせるに至るまでは、いくつか解説を加えなければなりません。

 

 

上記のトリアゾラムに対する知見から、その副作用に幻覚作用と異常行動があるのがわかります。さらにアルコールがその作用を増強することも示されていますので、綿流し祭のアルコール服用と相まって、効果が増幅されただろうことが読み解けます。

 

さらに鷹野が注入した量も、通常の医薬品としての処方量を超えた量を一度に注入したのでしょう。それにより、副作用が発現しやすい状態だったことが見受けられます。

 

鷹野「……あなたが今回、雛見沢に来た時に投与された予防薬はね、違うのよ?あなたは今、自覚してないだろうけども、すでにL3クラスで感染してる立派な『雛見沢症候群』の潜在患者なの。ジロウさん、注射する時、目を背けるクセがあるでしょう?駄目よ。自分に何の注射がされてるか、毎回ちゃんと確認した方がいいわよ?くすくすくすくす」

 

さらに上記からは、富竹がすでに何らかの薬物を注射されていることが示されています。これも富竹の体に依存症を形成するために打った、H173(ベンゾジアゼピン)系統のものだったのではないでしょうか。

 

トリアゾラムの性質上、眠りからはすぐに覚醒します。しかし大量投与のせいで、急速な離脱症候群が起こってしまったのでしょう。そこで幻覚が現れ、パニックにも陥った。このあたりの症状は副作用や離脱症候群にあるとおりです。

 

そして首筋に焦点が移ります。

 

 

季節は6月中旬、夏の入り口で梅雨の終わり頃。湿気と熱気が猛威を振るう、蒸し暑さが半端じゃない季節ですね。汗がべっとりとついた体に痒みを感じやすい時期だったことが想像できます。富竹は首を掻きました。首が痒かったのです。それは首にされた注射によるものだったろうと思っています。

 

そして注射針を…わざわざ陰湿にも喉元に当てた。

……注射器のピストンをぎゅぅ…っと絞り込むと、注射針の先端の皮が、内側からぷっくりと膨らみ、…やがて馴染み、吸い込まれて消えて行った…。

 

鷹野の注射によって、富竹の首筋にはすでに傷があります。その患部が季節と相まって痒くなってしまったことが容易に想像できます。暴れた後ですから、発汗の影響ももちろんあったでしょう。そして掻いた際に傷口がさらに悪化してしまった。出血してしまったのでしょう。このとき、富竹の手についた血が、富竹には血には見えなかった。レナと同じです。茨城時代のレナと似たような症状が富竹にも起こってしまった。

 

富竹は、自分の手についたものが血ではなく、蠢く何かに見えてしまった。これがキッカケで、富竹は自分の中にいる蠢く何かを追い出すために、パニック状態のまま首を掻き毟ったのです。

 

さらには「呼吸抑制」という症状。トリアゾラム大量投与によりこの症状が起きてしまった富竹は、急に息ができなくなったのでしょう。その原因は、喉から現れた変な生き物のせいだと思ってしまうのが自然な流れ。だから、呼吸を取り戻すために必死で首を掻きむしって、この変な生き物を追い出すしか生き延びる道がないと思ってしまったのです。

 

そして死んだ。

これが大枠となります。

 

 

 

血が別の蠢くなにかに見えてしまう状態。これを説明する病気もいくつかあります。そのうちの一つに「変視症」というものがあります。

 

目の事典・目の疾患

(抜粋)

見ようとするものがゆがんで見えたり,小さく見えたり,大きく見えたりする症状です。網膜の中心部である黄斑部にむくみや剥離があると変祝や小視が起こります。中心性網脈絡膜炎や網膜剥離がその原因となる病気です。またヒステリーや脳の病気でもこの症状が現われることがあります。このほか,調節麻痺があると小視症,調節けいれんがあると大視症を起こすこともあります。

 

 

この病気は、ものが歪んで見えるそうです。正常に見える片目と、歪んで見えるもう片方の目があったなら、止まっているものが波打つように見えることもあるように思います。ただの ”モノ” であるはずの血が波打ったとしたら、それは夜の暗さと相まって、蠢く何かに見えてしまったとしても不思議ではありません。

 

 

もう一つは「斜位」です。

 

116.斜視と斜位の違い | 池袋サンシャイン通り眼科診療所

(抜粋)

●斜位とは
 斜位とは、斜視と異なり、神経の緊張で両眼の視線を目標に合わせている状態です。したがって、斜位は通常視線のずれはなく、両眼視が可能です。しかし、もともとの眼の位置が完全に正しくないため、片目をかくしたり、覆ってしまったりすると、眼の位置がずれてしまいます。
もともとの眼の位置が完全に正しくない為、両眼を開いた瞬間は視線が目標に集中しません。視線のずれの程度が強いと、物が二重に見えることもあります。緊張状態で絶えず物を見ているため、眼精疲労を起こしやすいと言われています。

 

 

眼精疲労が酷かったり、精神的につらい状態だったりすると顕著に現れるこの症状は、ものを一つに捉えることができずに、目が勝手に動いて、ものが動いたり回転したりするように見えることがあるそうです。これが起きていたとしても、血が動いて見えたことの説明にはなりそうです。

 

そして富竹には目に障害がある可能性が示唆されています。

 

富竹「あは、あはははは…。昔ちょっとだけ教官の真似事をしていたけどね。怪我をした時に目をやっちゃってね。普段の生活には支障はないんだけど、大事に受け取られちゃって、それ以来は事務屋の仕事ばかりやらされてるんだよ」

 

これにより富竹は、目に健常者とはちがうなにかの病を患っていることが読み取れます。それの影響もあったのでしょう。

 

 

まとめると、「変視症」あるいは「斜位」によって血が動いて見えてしまったことと、深夜で視界が暗かったことと、パニックや疑心暗鬼になっている精神状態であったこと、この3点が絡んだ結果、血が変な生物に思えてしまったのです。だから首を掻き毟ってしまったのです。

 

 

 

 

 

 

 

トリアゾラムを大量に首に注射されたから、このような変死が起きてしまった。でもそれが検死で検出されなかったというのは不思議ですね。それを説明するのは薬物検出の歴史に秘密があると思っています。

 

 

薬物検査/麻薬検査|法科学鑑定研究所

(抜粋)

薬物検査・麻薬検査の主な分析方法

・イムノクロマトアッセイ

・GC-MS分析(ガスクロマトグラフィー質量分析)

・ICP-MS分析(誘導結合プラズマ質量分析)

・LC-MS分析 (液体クロマトグラフ質量分析計) など

 

 

検死に主に使われる技術は「LC/MS」「GC/MS」という技術だそうです。この「MS」というのは、分析部分(データベース)のことだそうで、「LCまたはGCという技術で採取した物質を、MSというデータベースに照らし合わせてその物質の正体を知る」というシステムが、検死の薬物検査のざっくりとしたやり方らしいです。

 

であれば、1983年当時日本で認可されて間もない新薬である「トリアゾラム」は、MSというデータベース内に存在しなかった可能性があります。トリアゾラムが摘出されたとしても、それがデータベース内にないため、異物があると認識されなかったのではないでしょうか。

 

 

もう一つ。

この技術の歴史は、「GC/MS」が昔から使われている主流の技術で、その後薬物乱用事件の多発を受けて進化した技術が「LC/MS」という技術になるそうです。

 

質量分析技術の臨床検査応用 -現状と課題

(抜粋)

質量分析技術の医療応用ではガス クロマトグラフィー質量分析(GC/MS)の歴史が長 く、解析対象も当初は薬物をはじめとする低分子物 質が主体であった

 

LC/MS の歴史と概要

(抜粋)

これに対して、 LC/MS では、クロマトグラフィーの移動相が液体である高速 液体クロマトグラフィー( HPLC: High Performance Liquid Chromatography)を用いるこ とから、大容量の溶媒を除去し対象物質のイオン化を進めるインターフェースの開発に困 難が伴った。

第 1 期:1980 年までのベルト法の時代

第 2 期:1980 年代の TSP 法、FAB 法の時代

特に、FAB 法は難揮発性物質のイオン化法として非常に高い能力を有していたことか ら、GC/MS では測定が不可能な物質への LC/MS の適用が急速に広まった。

 

ESIおよびLC/MSハイフネーテッド技術開発の歴史

(抜粋)

サーモスプレー(TSP)イオン化

Vestaらが 1980年に開発した24).このイオン化法により,高流速 (2 mL/min)の液体クロマトグラフィー(LC)と質量分析 計(MS) と の 組 み 合 わ せ(LC/MS) が 初 め て 実 現 し た25), 26).

 

 

「LC/MS」は1980年台に徐々に普及していった技術だそうなので、1983年の雛見沢村にあったかどうか、非常に微妙なところです。無くてもなんらおかしなことではありません。

 

 

LC/MS によるベンゾジアゼピン類とその 代謝物の同定と定量

(抜粋)

ベンゾジアゼピン類の分析には、UV 検出による HPLC [3]、窒素リン検出器と電子捕獲検出器によるガスクロマ トグラフィー [4]、およびガスクロマトグラフィー/質量 分析法 (GC/MS) [5] が使用されてきました。多くのベ ンゾジアゼピン系化合物は極性で不揮発性であるため、 GCGC/MS による分析は不可能とは言わないまでも 困難です。

さらに、フルニトラゼ パムなど一部の新しいベンゾジアゼピンは治療域が低く、 より速いクリアランスを持っているため、より低濃度で の定量が必要です。こうした化合物には、誘導体化を必 要としないことで時間、費用、実験の煩雑さが軽減され ることから、液体クロマトグラフィー/四重極質量分析が 最適です。

 

科学研究費補助金研究成果報告書

(抜粋)

(2) LC/MSによる催眠鎮静剤の一斉分析法の開発

 薬物がらみの犯罪や精神科疾患の治療などに多く用いられ、しばしば薬物分析の対象となるが、通常のGC/MS分析では確認不可能なベンゾジアゼピン系薬物を代表とする微量の睡眠鎮静剤の液体クロマトグラフ/質量分析計(LC/MS)による高感度一斉分析法を確立する。

 

 

その上で、上記の文献によれば、ベンゾジアゼピン系の薬物は「GC/MS」では検出が非常に困難だということだそうです。これらを踏まえれば、トリアゾラムが検出されなかった背景も、あながちおかしなことではなくなるかと思います。

 

 

 

1983年の雛見沢村にある検死技術では、「MS」というデータベースの穴と、「GC」というベンゾジアゼピンが検出困難な技術しかなかったという環境により、トリアゾラムが見過ごされてしまったということなのではないでしょうか。だから、富竹の遺体からは、薬物が何も検出されなかったという報告になったのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

富竹の首掻きむしり事案は上記の説明でほぼ完了ですが、もうひとり首を掻きむしったヤツがいましたね。鬼隠し編における圭一です。彼もトリアゾラムの影響なのでしょうか。それはちょっと違うように思います。なぜなら、H173を圭一に投与する機会は鬼隠し編ではなかったように思うからです。

 

 

 

では圭一には何が起こっていたのか。多分なんですが、「脱水症」ではないかと思います。

 

 

水分不足が起こす「脱水症」の症状はどんなもの?対策するには。

(抜粋)

体内の水分だけが不足する状態のことで、発熱や激しい口渇状態、意識の混濁なども起こすことがあります。気温の高い夏に熱中症を伴った脱水症はニュースになりやすいですが、日常生活のなかでもリスクが潜んでいることを理解しておきましょう。 

2% 強い乾き、めまい、吐き気、ぼんやりする、重苦しい、食欲減退、血液濃縮、尿量減少、血液濃度上昇 3%を超えると、汗が出なくなる

8% 幻覚・呼吸困難、めまい、チアノーゼ、言語不明瞭、疲労困憊、精神錯乱

 

 

考えてみたら圭一は、学校からの帰り道にレナに襲われてから、走りっぱなしです。最後もだれかに追われまくって緊張状態が続きました。初夏の影響から、大量の発汗があったことは間違いありません。それにより、脱水症になってしまったのではないでしょうか。水分損失率8%の症状が、最期に大石と電話で話していたときの圭一を説明するのに適しているかなと思います。

 

そして、またしても首に焦点が移ります。

 

大石から喉を掻き毟ってないかと尋ねられてしまったから、圭一はいやがおうにも首を意識せざるを得なかった。首に注射されたから、首に傷がすでにあったのは富竹と同じ。だから首が痒かった。

 

そして「呼吸困難」の症状が起こった。大石から得た事前情報のせいで、圭一はこの呼吸困難をいつの間にかされた「富竹殺しに使われた何らかの薬」のせいだと思ってしまった。その薬を首から掻き出すしか助かる道がないと思った。だから首を掻き毟ってしまったのかなと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このベンゾジアゼピン系薬剤は、実はH173だけではありません。レナが茨城の医師から処方された薬、赤い薬剤と認識されるそれも、ベンゾジアゼピン系薬剤だったと考えられます。その正体は「エリミン」だと思います。

 

 

エリミン錠が「赤玉」と呼ばれて販売中止になった理由

(抜粋)

エリミン錠は、その見た目から「赤玉」と呼ばれています。

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬なのですが、

他の睡眠薬よりもお酒に近い効き方をする睡眠薬です。

このため乱用されることも多く、「赤玉」は悪評高い睡眠薬です。

エリミンを乱用すると必ず後悔することになります。

依存になってしまうと、人生が狂ってしまいます。

エリミンを乱用すると・・・ 依存が急速に形成されて、  強烈な離脱症状や薬剤性精神症状がまっています。

青玉のハルシオンと赤玉のエリミン、

この2つは昔からよく乱用されました。

それでもエリミンを好んで処方する先生もいたりして、

私が知らないメリットがあるのかもしれません。

 

 

 

赤玉と称されるこのベンゾジアゼピン系睡眠薬は、現在でこそその危険性が認識されていますが、81、82年当時、その危険性が共通認識ではなかったと思われます。睡眠障害を患っている患者には、それこそ普通に処方していたのが当時の常識だった。

 

カケラ 赤いカプセル薬

記憶にすら残ろうとしないその奇怪な薬は、…カプセルだった気がする。

…気がする。…思い出せない。

あの薬は、人間を奪う。

…心を奪い、記憶を奪い、感情を奪い、体を鉛のように重く愚鈍にする。

 

レナは、処方されると一旦思考停止しまいます。そして再び覚醒すると、強烈な奇異反応を示しています。これらの症状はベンゾジアゼピン系薬剤で説明可能です。

 

レナは、ベンゾジアゼピン依存症に陥ってしまったのです。それが影響して、ガラス割る事件、オヤシロさま降臨事案、などを経験することになったのでしょう。すべて、ベンゾジアゼピン系薬剤の副作用と離脱症候群で捉えられる範囲内の現象なのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーひぐらし大学医学部精神病学科資料(了)

 

 

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コメント: 2
  • #1

    化学者() (月曜日, 05 8月 2019 16:12)

    GC/MSでも未知の物質があることはわかるんじゃないかな

  • #2

    gultonhreabjencehwev (月曜日, 05 8月 2019 19:34)

    おお、ご指摘ありがとうございます!その辺りの知識にお詳しいですか?私は医学の知識なんてこれっぽっちもないので、ご教授いただけましたら幸いです!とりあえず、私の推理と認識をお伝えします。めっちゃ長文ですみません!

    まず、未知の薬物が検出されなかったという認識は事実誤認だと思っています。「そういう類のものが検出できなかった」「検死の報告には上がっていない」という大石たちの警察の認識があるだけです。実際の検視官、立ち会った監察医の生の声が反映された描写はありません(見逃してるだけかもしれないのであったらご指摘ください)。その上で、大石が頼った知り合いの監察医のセリフと大石の反応が以下です。

    「メトアンフェタミン中毒は躁鬱病に近い症状を起こすと報告されとる。覚醒剤のことだ。それからバルビツール酸誘導体中毒にも異常行動が報告されとるがあまり一般的ではないのう。こっちは睡眠薬のことだ。」「覚醒剤反応、出なかったんですよねぇ。他の可能性は?」

    1983年当時の医学レベルを表す指標ですね。ベンゾジアゼピンの恐怖がなにも言及されていないことから、その存在を認知されていないことが読み取れます。さらに、薬物の知識を話す監察医と、それを受けて警察の大石が答えるという構図そのものが、富竹ジロウという遺体の内部に関する情報のすべてをこの医師が持っているわけではないということを示していると私は考えています。「いいお年を」という別れの挨拶を交わしているので、このときの会話が年末であることを想像させます。つまり、この監察医が実際の立ち会った医師ではなく、事件後しばらくしてから解決の目処が立たないために、大石がこの人物を訪れたという推理でいいのではないでしょうか。だからこの医師は、薬物に関することを一般論として大石に伝え、大石はバカなので、この医師の考えが富竹ジロウには当てはまらないなあと手元の資料から勝手に判断したというシーンなのではないでしょうか。それでもこの医師は、富竹の爪とかの外傷に関する初見を「調べている」という表現をしているので、死体の外表検査に対する関わりをもっているし、また、それ専門なんじゃないかなと想像しています。逆に言えば、遺体の薬剤監修的な専門医ではないのではないか、ということです。また「薬物の常用にせよ、精神的なものにせよ、仏の身元がカギを握っとるぞい」というセリフでは薬物の常用を否定していないことから、『薬物が一片たりとも検出されなかった』という考えを否定していると推理することが可能なのではないかとも思っています。ただ覚醒剤っぽい薬だと当たりをつけている古い大石の頭では、まさにそういう類のもの「ではないもの」しか検出されなかったことを示しているのではないでしょうか。

    ここまでが私の推理です。
    あとは、LC/MSがなく「ベンゾジアゼピンってなんぞ?」っていう環境において、GC/MSで調べた遺体から判断されるものの中に、警察のアンテナに引っかかるものが無かったのではないかとする私の推理を、現代医学ではなく、1983年当時の医学からも否定できるものなのでしょうか。その辺りの見識をぜひお聞かせください!!