祭囃し編

 

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祭囃し編のラスト、鷹野は雛見沢症候群の発症が伺えました。ということは、祭囃し編において、梨花は鷹野に薬物を盛っていたということを意味していると思われます。

 

 

 

 

祭囃し編のスタートは、綿流しの日の1週間前です。そして梨花は、皆殺し編の記憶がなく罪滅し編の記憶があるという状態になっていました。となれば、鷹野を排除するための祭具殿侵入を促す計画は見直され、その後1週間が経過したタイミングから始まったということになります。

 

 

 

梨花は、鷹野と富竹が必ず殺されるという前提を覆すため、鷹野にアンフェタミンを盛ることで、鷹野の攻撃力を上昇させ、周囲への警戒を拡大させ、襲いかかる連中に対して返り討ちを狙ったのではないでしょうか。

 

皆殺し編でもそれは実行され、だからこそ祭り当日から終末作戦実行中までの鷹野のテンションはハイになっていた。梨花が盛ったアンフェタミンの効果だったのです。

 

 

ところがこの祭囃し編では、当日までの1週間を残し、本当の敵が鷹野のほうだったと気付かされることになりました。だから梨花は、その瞬間から鷹野に盛っていたアンフェタミンの投与を止めたのです。

 

そのせいで鷹野は、アンフェタミンの離脱症状を起こしてしまったのです。それが祭囃し編での鷹野の精神状態だった。指揮している最中もイライラしっぱなしですよね。アンフェタミンの効果が切れて、ノルアドレナリンが枯渇しているからそうなっているのです。

 

 

 

 

あと赤坂のスーパーパワーも、梨花のアンフェタミンの効果だと思われます。成り行き上、梨花の家で数日過ごすことになった赤坂は、梨花の家にある食材を口にすることになりました。それのいずれかに、梨花はすでにアンフェタミンを混ぜてあったのでしょう。そんなことはつゆ知らず、赤坂はアンフェタミンを摂取してしまっていたのです。だから超強いんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その赤坂について。

 

梨花が赤坂に接する態度が、皆殺し編と祭囃し編とでぜんぜん違うことに違和感を感じました。

 

皆殺し編

梨花「……赤坂、なのですか…?」

赤坂「久し振りだね。…背、少し伸びたんじゃないかな」

梨花「赤坂こそ、…何だかたくましくなったようなのです」

赤坂「じゃあ、またね、梨花ちゃん」

梨花「あ、……赤坂はいつまでこっちにいるのですか?」

赤坂「綿流しのお祭りまでいるつもりだよ。……君は雪絵の恩人だ。借りはきっと返すよ。きっと君の力になる」

 

祭囃し編

梨花「あ、………赤坂………」

赤坂「覚えていてくれてありがとう、梨花ちゃん。…はははは、今度は東京へ帰れなんて言わないだろ?」

梨花「…あ、……赤坂、……赤坂……ッ!!!」

赤坂「…君が教えてくれたから雪絵に電話して、彼女が事故に遭わなかった。だから君は雪絵の恩人なんだ。……その恩を、私は今、返しに来たんだ。…………本当に長いこと忘れていた気がする。…でも、ようやく思い出したよ。…長いこと、待たせてすまなかったね」

梨花「…ほ、…本当に長いこと待たせやがったです…。そして、…こんな最期の最期の世界で、……本当に都合よく帰って来やがったのです…。赤坂、……赤坂………!」

 

 

 

 

祭囃し編のほうは分かりますよね。赤坂が帰ってきてくれてうれしかった。頼もしい味方が増えてうれしかった。でもそれは、皆殺し編だって同じですよ?君の力になるって言ってるじゃないですか。でも皆殺し編の梨花は、冷めた反応を見せてますよね。

 

 

これの理由のひとつは、祭囃し編の梨花の体が羽入の制御下にあるからということもあると思います。これ以前の羽入は傍観者だったのですから、梨花の行動に積極的に影響を及ぼさなかった。だから梨花本来の冷めた対応を取ったのが皆殺し編。一方祭囃し編では、嬉しさを隠さずにいることが梨花の行動として正しいという羽入の判断が梨花に影響したから、赤坂に抱きつくなんて大胆な行動をしたということなのでしょう。

 

 

 

しかし、それだけではないのではないでしょうか。冷静に俯瞰すれば見えるはずです。祭囃し編においては梨花の敵は鷹野だと判明していますが、皆殺し編においてはまだ敵が誰なのか判明していません。その状況下において、実は、警察機構の人間は、梨花にとってはまだ基本的に敵なのです

 

そりゃそうでしょう。梨花は長年に渡り薬物事件を引き起こしている張本人なのですから、その反抗勢力の中心たる警察は、敵に他なりません。そしてさらに都合が悪いことに、赤坂には、その犯行計画を吐露してしまっています。その情報が大石と共有されることで、一歩間違えば自分が犯人である可能性を見出されてしまうかもしれない。

 

皆殺し編の途中まで、梨花は鷹野たちの死を止めるための努力をしました。その理由は表面化されているとおり、自分の死と直結している可能性があったためでしたね。つまり、その死の原因さえ把握し、回避することができれば、その後は鷹野は用済みであり、邪魔なのは依然変わらないのであって、翌年以降にまた新たに鷹野排除計画を企てなければならない。なので、警察にはまだまだ目をつけられるわけにはいかなかった。目立ちたくなかった。梨花はこのとき、まだ赤坂を警戒していたってことなのです。

 

 

 

 

 

一方で祭囃し編では、梨花の敵は鷹野であることが明白になったあとの物語となります。しかも鷹野の組織は、警察機構に敵対するものであることも判明したのです。これは、梨花にとってはこの上なく都合がいい真実だった。翌年以降に邪魔な鷹野の排除をどうやろうかと頭を悩ませることなく、今年中に排除ができる。しかも法に触れる今までのやり方ではなく、敵であるはずの警察に、警察の理で以って鷹野の排除を手伝わせることができるのです。

 

だからこのとき梨花にとって警察は、真の意味で敵対する組織ではなくなったのです。もうこれ以上薬物による事件を誘引させる必要がなくなったため、警察の目を気にする必要がない。にもかかわらず、邪魔者の排除をすべて完了させられる。だから、心から警察に、赤坂に、助けてと言えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暇潰し編で梨花が赤坂に予知を伝えたのは、警察の力、赤坂の力を信頼して、助けてほしいという意味合いではなかったのです。

 

それはある意味リスクを取る行為。

 

梨花がオヤシロさまの祟り事件を最初から知っていたと警察機構に知られることは、梨花にとってはリスクしかありません。しかし、地元の警察ではなく、刑事でもない、東京にすぐに帰ってしまって雛見沢とのつながりの薄い赤坂に伝えることは、すぐさま自分の計画の破綻につながるものではなかった。それこそ水面に小石を投じる程度の波しか起こさないものであることを理解していた。

 

それでもそれは微細なリスクを伴っていた。そうまでしなければならなかったほど、梨花は自分の死に絶望し、追い詰められていたということなのです。遠くであっても、警察に伝えることでややもすると自分の計画に支障をきたすかもしれない。そんなリスクを背負ってでも、どうにかして未来に何らかの変化が欲しかった。リスクを負ったんだからリターンがあってもいいじゃないかって期待したということなのです。

 

 

ですから、皆殺し編においてはそのリスクが表面化する恐れがあった。だから皆殺し編の梨花は、手放しで赤坂の再来を歓迎できなかったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終的に鷹野をやっつけることができた梨花は、ようやく、邪魔者すべての排除が完了した。自分の幸せにとって障害だった者を、全員消せたのです。

 

これで5年前から始まった計画のすべてが終わった。もうしなければならないことは何もなかった。梨花の完全勝利です。ミステリーとしては珍しい部類に入ると思います。犯人が逃げ切る物語というのは。

 

 

 

それがよかったのか、悪かったのか。

 

羽入は、それに警鐘を鳴らしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨花に強いた賽殺し編。

 

それは、梨花にとっての『烙印』『スティグマ』なのです。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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